阪神が来季のコーチ候補として矢野燿大氏(43)をリストアップしていることが30日、分かった。球団はすでにコーチ陣のテコ入れ方針を固めている。中でも今季、特に苦しんだ捕手部門を再建する切り札として矢野氏が浮上。また、経験の浅さをカバーするべく、1軍ヘッドコーチ、2軍監督を務めた実績のある平田勝男氏(53)の招聘(しょうへい)プランも浮上した。

 低迷からの逆襲へ向けて猛虎の動きが加速してきた。この日、南球団社長は近日中にも坂井オーナーと会談する可能性を示唆した。9月5日の臨時役員会では球団初のGMにOBの中村氏が就任することが承認される見通し。その前にトップ会談を行っておきたいという意向のようだ。

 球団はすでに今季の体制からコーチ陣のテコ入れを行うことを決定しているが、関係者によれば、その中に矢野氏、平田氏の名前が浮上しているという。

 阪神は今季、正捕手不在に苦しんだ。FAで獲得した城島が捕手でプレーできない状態にあり、経験のある藤井彰も度重なる故障で離脱、復帰を繰り返した。6月には日本ハムからトレードで今成を緊急補強。小宮山、岡崎らとともに試合ごとに捕手を代える状態が続いた。正捕手を固定できず、リーグ屈指の先発陣を誇る投手陣も勝負どころで失点するシーンが目立つ。

 阪神の弱点とも言える捕手部門だが、球団では以前から切り札として矢野氏をリストアップしていた。矢野氏は98年に中日からトレードで移籍。正捕手として星野政権の03年、岡田政権の05年と2度のリーグ優勝に貢献した。投手陣はもちろん、野手からも信頼が厚く、プレーだけでなく、チームの精神的な支柱だった。早すぎると言われながら10年に引退すると、そこから正捕手が固定できないシーズンが続いている。

 現在、左膝を痛めてリハビリ中の城島が来季、捕手として復帰できるかどうかは不透明だ。ベテラン藤井彰はいるが、小宮山、今成、岡崎ら経験の浅い捕手たちを正捕手として独り立ちさせることが急務となる。

 また今季は、ほとんどの部門で“新任”のコーチが多かった。反省点として経験の浅さが指摘されている。そこで、04年からの岡田政権でヘッドコーチ、2軍監督を務めて、経験豊富な平田氏の名前も入閣候補に浮上した。DeNAと最下位争いを繰り広げる窮状の裏で、来季へのプランが着々と進行している。

 ◆矢野燿大(やの・あきひろ)1968年(昭43)12月6日生まれ。大阪府出身。桜宮から東北福祉大を経て90年ドラフト2位で中日入団。97年オフに阪神移籍。捕手として03、05、06年ベストナイン。03、05年ゴールデングラブ賞獲得。08年北京五輪出場。10年に引退。プロ20年で通算1669試合、打率2割7分4厘、112本塁打、570打点。右投げ右打ち。

 ◆平田勝男(ひらた・かつお)1959年(昭34)7月31日、長崎県生まれ。長崎海星-明大を経て、81年ドラフト2位で阪神入団。堅実な守備でゴールデングラブ賞4度。94年に現役を引退。プロ13年で979試合、打率2割5分8厘、23本塁打、220打点。野球評論家を経て、97年に阪神の内野守備コーチに就任。02年から星野監督の監督付広報を務め、04年からヘッドコーチ。07年2軍監督に就任し、10年に退団。