<コナミ日本シリーズ2012:日本ハム1-0巨人>◇第4戦◇10月31日◇札幌ドーム
日本ハムの高卒3年目右腕・中村勝投手(20)が、シリーズ初登板で先発の大役を全うした。100キロ台前半のカーブを有効に使うなど、巨人打線を7回5安打無失点と翻弄(ほんろう)。勝利投手の座こそつかめなかったが「埼玉のダルビッシュ」の異名に恥じない堂々とした投球を披露した。晴れやかな大一番で、ニューヒーローが誕生した。
もみくちゃの輪の中で、さわやかスマイルが爆発した。投のヒーロー、中村がベンチを飛び出した。全身全霊で務めた大役が報われた劇的なサヨナラ勝ち。ポストシーズン初登板での白星は逃しても、負ければ崖っぷちのマウンドを執念で守り抜いた。巨人宮国との日本シリーズ史に残るヤング対決。緊迫の投手戦を演出した。「本当にサイコーッすね」と珍しく声はうわずった。
愛情あふれる抜てきに応えた。第4戦。他投手を先発起用する意見もあったが、栗山監督が熱望して指名された。130キロ台後半ながら、キレと伸びが抜群の直球。100キロ台前半のスローカーブのシンプルな組み立てで、20歳らしく、潔く攻めた。0-0のまま迎えた6回2死二塁。4番高橋由に、全5球の直球勝負を挑んだ。最後は内角高め137キロで空振り三振。「思い切って投げた」と力業でピンチを脱した。強気に、巨人打線の打ち損じを誘い続けた。
巨人との前回日本シリーズ、09年のドラフト1位で入団も「全然、記憶にない」。当時は現実味がなかった晴れ舞台が巡ってきた。1年目に初登板初勝利で鮮烈デビューも、スランプと登板機会に恵まれない不遇の時を過ごした。9月に2年ぶり白星を挙げ、大舞台への道を切り開いた。「結果よりも、自分のやれることをやろうと思った。(宮国は)意識しないで、打者に意識を置いていた」。背伸びしない正攻法のマイスタイルで、無失点リレーの伏線をつくった。
端正なマスクと投球スタイルから、異名は「埼玉のダルビッシュ」。あこがれの存在がチームを去っても、身近に尊敬する先輩がもう1人いる。「勝」が同名のエース武田勝。一流を感じるのが、遠征先などで一緒にゲームの「マリオ・テニス」で対戦する時だ。武田勝は大差でリードしていても手を抜かず、勝負に貪欲。中村は「すごいんですよ。点差があっても容赦がない」と言う。そんな姿にも感化されて鍛えたメンタルを武器に、大一番で力を発揮した。
明るい未来への布石となる経験を積んだ。高校時代からAKB48の大島優子にぞっこんだったが「今は、少し熱が冷めました」。女性の好みも変わり、内面の成長を実感しているという。7回77球で無四球、無失点の快投ショー。「これからも忘れずにやっていきたい」。最高峰の舞台で躍動し、また大人の階段を上った。【高山通史】
▼第4戦は20歳10カ月の中村(日本ハム)と20歳6カ月の宮国(巨人)が先発。20歳以下で先発は、日本ハムでは07年第4戦吉川(19歳6カ月)以来で、巨人では87年第1戦、第5戦桑田(19歳6カ月)以来。2人とも7回無失点で降板。シリーズで20歳以下の投手が先発対決は57年第3戦稲尾(西鉄=20歳4カ月)と義原(巨人=20歳3カ月)以来55年ぶり4度目だが、両投手がともに7回以上投げたケースは初めて。



