<巨人3-2広島>◇3月31日◇東京ドーム

 巨人坂本勇人内野手(24)が同世代の戦友から反撃の1発を放った。1点を追う7回に広島前田健太投手(24)から左中間に今季1号ソロをたたき込んだ。WBCでも侍ジャパンの一員として苦楽を分かち合ったライバルから通算4本目の本塁打。自らのバットで劣勢をはね返し、チームを開幕カード無敗に導いた。

 ライバルの腰がガックリと沈んだ。坂本の放った一撃の左中間への軌跡は打った瞬間、前田健にスタンドインすると察知させた。1点を追う7回。カウント2-2からマエケンの代名詞、スライダーが高めに入ったのを完璧に捉えた。今季1号はWBCを戦い抜いた戦友であり、黄金の88年世代の1人でもある相手から生まれた。

 6シーズン目の対戦で通算4本目。だが同世代への意識は口にはしなかった。「同学年と言うより、広島のエース。いい投手に対して内容のある打撃ができた」。エースのウイニングショットを打ち砕くのは主軸の務めだ。「スライダーがいい投手なので常に意識を持っている。センターへの意識で入って、いい所に飛んでくれた。(初球ファウルも含め)失投2球は珍しいけど、2球目を打てて良かった」と同世代対決よりも内容を強調した。

 ともに世界でひと回り大きくなった。前田健はベストナインに輝いたが、坂本も掛け替えのない経験を積んだ。「台湾戦は足が震える状態でのプレーだった。あれ以上はない。『(守備で)飛んでくるな』と思うぐらいでしたから。精神面では大きな財産になった」。大舞台に強い男が台湾戦の翌日は午後3時まで睡眠をむさぼるほど疲弊した。極限状態でのプレーは、簡単には動じない、強き心をつくった。

 開幕直前に腰痛を訴え、この日も念入りに治療を行い、球場を離れたのは終了2時間後だった。「行った人はみんな同じ状況でやっているし、結果を出している」。いまだに時差ぼけは残り、ナイターの時間帯は眠気に襲われる。だが弱音は吐かない。巨人の若き3番打者は疾走し続ける。【広重竜太郎】

 ▼坂本が前田健から今季1号。坂本が開幕カードで本塁打を打ったのは、10年ヤクルト戦で2試合目に1号、3試合目に2号を記録して以来、3年ぶり2度目だ。前田健からの1発は11年5月15日以来、通算4本目。坂本にとっては、吉見(中日)石川(ヤクルト)と並び最も多く本塁打を打っている投手となった。開幕カードで本塁打を放った10年は自身最多の31本を記録したが、今年は何本打てるか。