<ソフトバンク1-9楽天>◇3月31日◇ヤフオクドーム

 パパは強かった。楽天ケーシー・マギー内野手(30)が来日初打点。2回無死二塁で「次の塁に送ろう」と右方向を意識し、ソフトバンク武田からの右前打が先制打となった。3-0の5回無死一、二塁では、藤岡から右中間に2点二塁打を放ち、大勢を決めた。2安打3打点で、開幕カード勝ち越しをもたらした。

 試合後も表情を崩さず質問に答えていたマギーが、ようやく笑った。家族の話題に「(空港行きの)バスの中で電話するよ」とニッコリ。遠征を終え、仙台に帰る。1週間ほど前に来日した、何より大切な妻と2人の子どもが待っている。

 日本に行くべきか-。メキシカンリーグも経験したマギーだが、来日は「人生で、一番難しい決断だった」。家族を養うには、出場機会のある楽天は魅力。だが、家族ゆえに迷った。2月で6歳になった長男マケイル君はポリオ(小児まひ)と闘っている。「日本では障害のある子どもの環境がどうか、調べた。球団もサポートしてくれると。妻と考えて決めた」と明かした。

 1月末の来日後は家族と離ればなれになった。心が揺れた日もあった。キャンプ中の三木谷オーナーとの懇親会。宴もたけなわとなり、鈴木内野守備走塁コーチがマイクを握った。「悲しい時、うれしい時、人は涙を流すのでしょう」。同コーチの知人で、進行性筋ジストロフィーを抱える男性がつくった歌だった。マギーは泣いた。翌日がマケイル君の誕生日だった。

 マギー

 あの歌を聞いて、楽天に来て正解だと思った。マック(マケイル)の将来を思うと、感情的になる時もあるよ。でも、僕は障害のある子の父親として、強くなきゃいけない。

 明るい振る舞いで、ムードメーカーにもなっている。「マックは階段を上るのも時間がかかるけど、決して文句は言わない。いつか日本に、なじんでくれると信じている」と力強く言った。頼れるポイントゲッターとして、格好良いパパとして、マギーのシーズンが始まった。【古川真弥】

 ◆ケーシー・マギー

 1982年10月12日、米サンフランシスコ近郊のサンタクルーズ生まれ。03年にドラフト10巡目でカブス入りし、08年に初昇格。09年は、ブルワーズで9月の新人月間MVPに輝くなど、両リーグ新人1位の66打点を挙げ、新人王得票5位に入った。10年には8月に球団記録の9打数連続安打をマークするなど、地元記者が選ぶチームMVPを獲得した。昨季は7月にパイレーツからヤンキースに移籍し、故障したロドリゲス、テシェイラ両内野手の代役を務めた。185センチ、99キロ。右投げ右打ち。