宇宙人が神様から金言をもらった!

 宇宙人ことDeNA井納翔一投手(27)が4日、沖縄・宜野湾キャンプでブルペン入り。フォークボールの神様、杉下茂氏(88)が見守る中67球を投げ込んだ。投球後、杉下氏に呼ばれ、伝家の宝刀を投げられる秘訣(ひけつ)を学び、井納はご満悦の様子だった。

 宇宙人にとって、とんでもない瞬間だった。神様が視察しているにもかかわらず、井納はのんびりクールダウン。ロッカールームに戻ろうとしたとき、杉下氏に呼び止められ、ようやく気づいた。「全く気づきませんでした。フォークボールを投げられる方法を教えてもらいました」とうれしそうに話した。

 神様からはこう教わった。

 杉下氏

 (良い)フォークを投げるようにするならカーブの練習をしろ。カーブで手首を柔らかく使うコツを覚えられれば、ストレートも良くなる。ストレートが良ければ自然とフォークは落ちる。

 神様の独特な理論だが、井納にはすぐ理解できた。「確かにカーブを投げた後のストレートは、良い感じで力が抜けて、キレのあるボールを投げられてたと思います」。これまでのブルペンは、カーブ1割、フォークボールは1~2割だった。「これからはカーブを増やして、フォークの数を減らして行く」と次回から神様理論で投球練習することを明かした。

 さらにうれしいことがあった。憧れの藤川球児投手(33=カブス)も杉下氏に同じように教わり、直球とフォークボールを磨いた。杉下氏は井納を「(藤川と)同じぐらいの素質のある球を投げる」と評したからだった。この日、ランニングのメニューで足を痛めるアクシデントもあったが、「150キロを超えて、真っすぐと分かっていても空振りを取れる、直球を投げられれば」と自然と笑みがこぼれた。

 ルーキーイヤーの昨年はシーズン5勝、小久保ジャパンに選ばれる活躍だったが、不思議な言動から「宇宙人」と呼ばれ、野球以上に人物像がクローズアップされた。今季こそ神様から教わった理論で、野球で注目される。【細江純平】

 ◆杉下氏の投球指導

 杉下氏は「フォークボールの神様」としてキャンプで指導を頼まれることが多い。91年秋には大洋の欠端、大門に、92年秋には巨人の水野、木田、宮本に伝授。佐々木(横浜)や藤川球(阪神)といった球界を代表する使い手にも「練習より遊びの中で覚えろ」と助言を与えてきた。藤川球は03年に「もっと直球を磨いてから」と伝授を断られたが、08年には「ランナー三塁で一番使うべき。どんな時でも使えないならフォークは投げないほうがいい」と金言を授けられた。

 ◆杉下茂(すぎした・しげる)1925年(大14)9月17日、東京都生まれ。帝京商-いすゞ自動車-明大専門部を経て49年中日入団。54年に32勝で球団初のリーグ優勝、日本一に貢献し、MVP、沢村賞、投手3冠。59、60年に中日監督を務めた後、61年大毎で現役復帰し同年引退。最多勝2度、最多奪三振2度、沢村賞3度。通算525試合、215勝123敗、防御率2・23。引退後は中日、阪神の監督、巨人、西武投手コーチなどを歴任。85年野球殿堂入り。右投げ右打ち。