<オリックス0-7日本ハム>◇11日◇ほっともっと神戸

 陽気なメキシカンが長いトンネルを抜けた。日本ハムの新外国人ルイス・メンドーサ投手(30)が難産の来日2勝目をつかんだ。オリックス打線に、今季最長の8回を散発4安打無失点。4月1日ソフトバンク戦で初登板初勝利を挙げた後に5連敗を喫していたが、快投でストップした。最愛のモニカ夫人(25)が見守る前で、今季2度目の0封勝利の主役に。2カードぶり勝ち越しでロッテをかわし3位に再浮上。今季の新戦力の目玉から本領発揮の気配が漂ってきた。

 愛の儀式を確信した。歓喜の瞬間、メンドーサの視線の先で三塁側スタンド上段のモニカ夫人は両腕を上げ、手をたたき祝福した。5連敗の末、待望の今季2勝目。「今日から毎回、モニカを呼ばないとね」とおのろけ全開で喜んだ。来日初登板初勝利を挙げた4月1日ソフトバンク戦に続き、愛妻が見守る試合は2戦2勝。この日も「勝利の女神」をほほえませた。

 熱烈なラブパワーを体中にみなぎらせた。1イニングを投げ終えベンチへ戻る間際。欠かさずにスタンドのモニカ夫人と帽子のつばを触る愛のサインを交換した。「恐らくモニカが力をくれたんだと思う」。約70メートル先の妻との2人だけの空間が生まれていた。ヒーローインタビュー中も数え切れないほど見つめ合った。インタビュー後は投げキスを受け取り、照れくさそうに勝利を分かち合った。

 チームの思いにも応えた。序盤に3点の援護を受け5回1死まで無安打と勢いに乗った。6回以降の3イニングは得点圏に走者を許したが散発4安打。「常に低めを意識した」と来日最長8回を投げ無失点に抑えた。栗山監督は「(野手が)しっかり守れれば。良い状態だから」と、ベテラン飯山を先発で起用する守備力重視の布陣を敷き、バックアップした。

 頼もしいチームメートから来日直後、手荒い「洗礼」を受けていた。「太っている」とジョーク交じりにからかわれた。体形を気にし始めたが運動や食事制限などダイエットはゼロ。気づけば「自然と落ちた」と最大で11キロの減量に成功した。新たな体と引き換えに生命線の球威が低下した。球速は本来、常時140キロ後半。来日当初は最速145キロをマークしたが、130キロ後半まで落ちていた。

 球団は魅力あふれる右のパワー投手として獲得した。昨季まで在籍した実績十分のケッペルとウルフ(ソフトバンク)の両右腕との契約打ち切りを早期決断した決め手の1つに、メンドーサの存在があった。現在は約5キロほど増えベストな状態まであとわずか。「家族の前では力が出るよ」と、最愛のパートナーがいれば逆境も乗り越えられる。試合後の球場の正面玄関前。抱き合いキスを交わし、それを証明した。【田中彩友美】