<ロッテ2-6日本ハム>◇30日◇QVCマリン

 長いトンネルを抜けた。日本ハム上沢直之投手(20)が、52日ぶりの白星を手にした。ロッテを相手に3回までに2点を失いながらもそこから立ち直り、4回から4イニングを無安打に抑え、7回4安打5三振で7勝目を挙げた。6月8日の中日戦以降足踏みが続いていたが、地元・千葉で復活を高らかにアピールした。

 先発ローテに、確かな柱が復活した。上沢が6月8日中日戦以来、約2カ月ぶりに勝利を味わった。「良かったです。ちょっと、長かったですね…」。湿度を含んだ熱風も、このときばかりは心地よく感じた。

 1回、先頭の加藤に与えた四球が失点につながった。初回の失点は3試合連続。不安定に立ち上がる課題は残ったが、しっかりと修正した。2回以降はすべてのイニングで先頭打者を抑えた。無走者時でもセットポジションにする工夫もあった。「下半身で動くようにしたらストレートも(指に)かかるようになった」。7回2死、金沢をその直球で三邪飛に仕留めると、珍しく雄たけびをあげた。気持ちを前面に出した、自己最多の126球だった。

 リベンジのマウンドでもあった。千葉県出身の上沢にとって、QVCマリンは甲子園へ通じる県大会の舞台。専大松戸2年夏は、準決勝まで駒を進めてマリンのマウンドに立ったが、敗れて涙をのんだ。「いい思い出はないですね」。スタンドには当時のチームメートも応援に駆けつけていた。「(3年時は)僕が軸のチームだったので。甲子園に連れて行くことができなかった。『あいつと一緒に野球をやっていたんだ』と自慢できるように、僕が頑張っていきたい」。かつての戦友の前で、QVCマリン初勝利を挙げ、痛快に悔しさを晴らしてみせた。

 5月9日までに5勝を挙げた上沢の歯車が、後半戦に入り、再び動き始めた。「黒木コーチから2ケタ(勝利)は簡単じゃないと言われてます。具体的な数字ではなく、1人1人に集中していきたいです」。上位追撃の風が、少しずつ起こり始めている。【本間翼】