<阪神5-17広島>◇13日◇甲子園

 悪い夢でも見ているようだった。われらの甲子園で、赤いユニホームがグルグルとダイヤモンドを駆けめぐっていた…。阪神が歴史的な大敗で自力2位の可能性が消滅した。1試合17失点は10年ぶり。聖地では64年ぶりという屈辱が、勝負の9月によみがえってしまった。虎党も途中からカープを応援する、あきれよう。あぁ、なんてこった-。

 虎党が盛り上がっていた。8回、広島田中の2ランが飛び込んだ右翼席はバンザイだった。真っ赤な左翼席と「大瀬良コール」を同調。広島の攻撃時には、一緒にスクワット応援しながら発散した。やけっぱちになるのも、しょうがない。甲子園での17失点は実に64年ぶり。深い愛は憎悪に変わっていた。和田豊監督(52)の「本拠地でこういう…(負け方)。悪循環だった」という声に力はなかった。

 ファンも「たられば」を言いたくなる展開だ。ドラ1左腕の岩貞祐太投手(23)が、いきなりの4失点で1回KO。打線の奮起で2回には1点差に迫った。3-4の4回、先頭福留孝介外野手(37)が二塁打。続く伊藤隼太外野手(25)は初球を力ない遊飛、鶴岡は空振り三振。拙攻か同点か。勝負をかけた代打西岡剛内野手(30)は遊飛に終わった。

 結果的に2回から3イニングを完璧救援、9人から6三振を奪った歳内を代えた。あのまま続投していたら-。「(歳内を)そうは引っ張れない。早い回に追い付いて、追い越して」と和田監督。勝負手ははまらず、3番手金田が直後に3点を失った。追い上げムードは諦めムードになり、惨めな失点劇が続いた。さらに、本拠地で4失策。虎党からは広島へのバラエティーに富んだ声援とは対照的に、7回に後逸した伊藤隼へ「気合を入れろ隼太」のゲキが飛んだ。

 2位広島との差は再び3・5ゲーム差へ開いた。「自力2位」の可能性は豪快に消滅。昨季の順位を保つのも厳しい状況だ。直接対決5試合を残す4・5差の4位DeNAを蹴落としても、このままではクライマックスシリーズ(CS)はビジターでの戦い。本拠地開催とは億単位の差が出る。広島とは第1ステージの対戦が濃厚。「前哨戦」としては目を覆いたくなる負けっぷりだけに、今日14日に勝ってカード勝率5割以上を確保したいところだ。

 チケット完売、満員だったスタンドも終盤は空席だらけになった。指揮官が「勝負」と宣言した9月で最重要視していた巨人、広島との6連戦の負け越しが決まった。来季続投の方針が白紙となっている和田監督のペナントも残り15試合。順調ならば、1カ月後にはCSが待っている。和田阪神、勝負の3年目。悲しきタテジマの姿は、もう見たくない。【近間康隆】

 ▼阪神は自力2位の可能性も消滅した。残り15試合に全勝しても、最終成績は80勝63敗1分けで勝率5割5分9厘。広島が阪神戦残り3試合に全敗しても、他球団との14試合中13試合に勝てば80勝62敗2分けで5割6分3厘となり、阪神を上回るため。

 ▼阪神の1試合17失点は、04年4月7日横浜戦(横浜)以来10年ぶりで、球団史上11度目。甲子園に限れば50年4月16日巨人戦で、川上の3本塁打など計6本塁打を浴び3-18で敗れて以来、64年ぶり3度目。なお広島戦通算1667試合目にして、カード最多失点を更新(過去16失点が2度)。