西武がドラフト1位指名した花巻東の菊池雄星投手(18)が最速155キロの直球で、2年連続本塁打王の中村剛也内野手(26)に真っ向勝負を宣言した。21日、岩手・雫石町のホテルで両親を交えて入団交渉を行い、仮契約。契約金1億円プラス出来高払い5000万円、年俸1500万円で合意した。98年松坂大輔投手(現レッドソックス)の入団時を超え、西武の高卒新人では過去最高の契約条件となった。背番号は「17」に決定。入団発表は12月に都内で行われる予定だ。

 朝からの積雪で、岩手・雫石プリンスホテルの辺り一面が白く染まった。故郷でプロ入りを決めた菊池は「今日に合わせて偶然のように雪も降りましたし、白星も同じ数だけ勝てるようになりたいです」。雪を「白星」にかけて、貪欲(どんよく)に勝利を願う気持ちをたとえると、照れくさそうに笑った。見慣れたはずの雪景色が、これから離れると思えば、どこか懐かしかった。

 約3時間に及んだ入団交渉で、新人選手の上限となる最高条件を提示された。98年に入団した松坂も満額だったが、当時の年俸は1300万円。1500万円の菊池が、西武の高卒新人記録を塗りかえた。背番号「17」には、入団1年目に16勝して新人王を獲得した松坂を超えてほしい願いもこめられている。菊池は「6月17日は誕生日で、(高校1年夏の)甲子園で初めてつけた番号でもあるのでうれしいです。エースナンバー(18)を支え、近づけるよう頑張りたい」と、松坂から涌井が受け継ぐ18番に負けない活躍を誓った。

 謙虚な姿勢は、決して崩さない。来年春の1軍キャンプスタートが内定しているが「なるべく早く1軍に上がれるよう、心づくりと体づくりを一からやりたい」と言った。順調なら、紅白戦などで主力組との対戦が最初の力試しの舞台になる。中村との対戦を想像し「打たれるイメージしかないけど、本塁打王に真っすぐでどれだけ通用するか試したい」と最速155キロ直球で真っ向勝負を誓った。

 ドラフト前はメジャー挑戦にも心が揺れたが、関連の話題は封印することを決めている。今は西武で結果を出すこと以外、頭にない。「期待も不安もあるけど、不安を取り除くには練習しかない。今日も帰って練習します」。菊池専用に作成された練習メニューを受け取り、プロの一員になった喜びを実感していた。【柴田猛夫】