大相撲には「関脇が強い場所は面白い」という言葉がある。今場所を振り返ると、新関脇の照ノ富士(23=伊勢ケ浜)が横綱白鵬(30=宮城野)を倒した13日目以降、場内はかなりの盛り上がりを見せた。だが、15日間を通して面白い場所だったかというと、どうしても首をかしげてしまう。

 1つは、白鵬とそれ以外の横綱、大関陣との差にあった。初日にいきなり鶴竜(29=井筒)が休場し、稀勢の里(28=田子ノ浦)も連敗スタート。3日目にようやく初白星を上げたかと思えば、日馬富士(30=伊勢ケ浜)が逸ノ城(21=湊)に敗れ、さらに8日目から連続で金星を配給した。

 ともに4連勝スタートだった琴奨菊(31=佐渡ケ嶽)と豪栄道(28=境川)も、終わってみれば稀勢の里より悪い8勝止まり。揚げ句、誰も白鵬を止めることはできなかった。これでは、いくら関脇が強くても…。大阪のファンからは「白鵬以外の番付を見直した方がいい」「白鵬だけ1日二番取れば(体力的に)平等かも」などとやゆする声も聞こえた。そんな声が出ることが、悲しかった。

 もう1つは「けが」。横綱として54年(昭29)夏場所の吉葉山以来、61年ぶりとなった鶴竜の初日不戦敗。新関脇の隠岐の海(29=八角)は、朝稽古で負傷した。白星先行の遠藤(24=追手風)は前に出る相撲で白星を重ね、期待が高まり始めた直後、膝に重傷を負い、安美錦(36=伊勢ケ浜)も8勝の決まり手がすべて異なる業師ぶりを発揮していた直後のけが。ふがいない上位陣よりも期待できただけに、残念だった。

 初場所から連続して、春場所では14年ぶりに15日間満員御礼を記録した。要因は数多くあれど、これを維持するために北の湖理事長(元横綱)は「土俵の充実」を掲げる。だが、けがという不慮の出来事もあるとはいえ、今場所の内容は…。まだまだ強さに衰えを見せない白鵬。そこにコンスタントについていく力士がいなければ、せっかく上昇した相撲人気は、また下がってしまう。【今村健人】