取組後の支度部屋。力士の表情は、当たり前ながら白星の後と黒星の後では対照的だ。勝てば、ホッとしたようにひと息つく感じが分かるし、負ければ記者を近づけないオーラを醸し出す力士も少なくない。そんな中、勝っても負けても態度が変わらない代表的な関取が、幕内の魁聖(28=友綱)だ。

 勝てば控えめながらもおどけて笑わせ、負けても悔しさを抑えながら素早く気持ちを切り替えて自虐ネタをこぼしてくれる。記者にとっては、同部屋の兄弟子旭天鵬とともに、勝っても負けても話を聞きたい力士なのだ。

 夏場所では、11日目まで1敗を守り、白鵬とともに優勝争いを引っ張った。12年名古屋場所以来となる、前頭2ケタ台まで番付が降下して、発奮もしたのだろう。場所前に出稽古にきた白鵬と連日稽古をこなし、土俵外からも横綱の動きを直視した。「立ち合いを見た。足をどうやって前に出しているかとか、勉強した。やっぱ違う。スピードも踏み込みも、腰もずっと下りてる」。最高の手本を見習った成果か、電車道で一気に前に出る相撲も目立った。

 ブラジル・サンパウロ出身で祖父母が日本人の日系3世。実家は、F1のブラジルGPが行われる「インテルラゴス・サーキット」の近くで「F1の時はうるさいんですよ」と笑う。「サンパウロは冬でも15度以下にならない」と話すだけに、暑い季節が大好きだ。故郷には12年2月以来帰っておらず、望郷の念も日ごとに増している。「次はクリスマスの時に帰りたい。でも、すぐ後に初場所があるし…。日本のクリスマスは、部屋で過ごすから家族がいないし寂しい」。陽気な性格の裏で、ホームシックになる繊細さも持ち合わせているようだが、その深刻さを感じさせないのも、魁聖の魅力だ。「自分がブラジル行くより、家族が日本に来て一緒にクリスマスしたほうがいいな。ハハハ」と、望郷話を最後は笑い飛ばした。

 必死さやがむしゃらさとは対極的な、おおらかさ、のんびりさが漂う力士でもある。師匠の友綱親方(元関脇魁輝)は「遠い日本に来て、生活環境が変わって、その中でせっかくここまで上がってきて、もうちょっと必死にやれば、それ以上の地位になれるのに、その気持ちが出てこないのが不思議」と、首をかしげる。裏を返せば、気持ちにスイッチさえ入れば、さらに上を狙える器だということだ。195センチ、190キロの体は、新大関照ノ富士にもひけをとらない。暑い季節が得意なだけに、名古屋場所での活躍も楽しみだ。【木村有三】