夏場所を前に、新体制となった審判部が動いた。

 力士会に出席して、立ち合いの手つき不十分やダメ押しの醜さを説き、琴勇輝には立ち合い直前に雄たけびを上げる「ホウッ!」を控えるようにうながした。

 横綱審議委員会の稽古総見では、十両力士の手つきが不十分と見るや、副部長が全員を支度部屋に集めて指導した。大関琴奨菊にも稽古後に「全部、待ったになるよ」と注意した。

 新体制発足からわずか1カ月で、その動きは早い。これは二所ノ関親方(元大関若嶋津)、友綱親方(元関脇魁輝)、藤島親方(元大関武双山)の“物言える”3人が審判部幹部に就いたことが大きい。駆け引きもあって、最近は明らかに“乱れ”が目立っていた土俵を、手遅れにならないうちに正常化させる-。琴奨菊は稽古で、これまでと違った手つきを意識していた。大関に限らず、審判部からの注意は大きなくさびとなっただろう。

 琴勇輝の雄たけびへの注意に関しては、確かに賛否が分かれる。三段目時代から続ける「ルーティン」で、今までずっと黙認されてきた背景がある。それを今になって…という声。一方で、高見盛らと違って土俵の中での動作は意味が異なる。相手への敬意が払われていない…という声。

 友綱副部長(元関脇魁輝)はこう説明した。「相撲というのは場所前に『土俵祭り』を行い、千秋楽が終わると『神送りの儀』をする。その意味を考えたとき、そういうことが果たして正しいのかな」。結局は、琴勇輝自身が考えて、やめることを明らかにした。

 これらは相撲協会が掲げる「土俵の充実」の一環でもある。思えばこの言葉をスローガンに掲げていた二子山理事長(初代横綱若乃花)も厳しく「立ち合いの清浄化」に取り組んだ。夏場所は、最初は力士のリズムも狂い、荒れるかもしれない。だが、長い目で見れば…。

 夏場所の相撲が変わる。それは、これからの相撲が変わることを示している。【今村健人】