戦国時代に辛酸をなめた祖先がいる。その留飲を下げるべく全国に散らばる同姓の希望の星として、1人の力士が孤軍奮闘する。今場所8度目の白星に「あの勝ち名乗りは自分のことのようにうれしい。ワクワク感が止まりません」と「全国石浦会」の幹事役で石浦家具製作所(富山・高岡市)の石浦秀幸さんは言う。

 石浦姓は全国に約2000人いるとされる。石浦さんによればルーツは400年以上前。加賀一向一揆を織田軍に鎮圧された石浦姓の豪族が全国に離散した。その多くは今の富山、石川や京都などに居を構え、金沢には石浦神社がある。

 そんなルーツをたどりながら「石浦姓で集まろう」と自然発生的に「全国石浦会」が発足。新十両を機に不定期ながら、都内や巡業地での激励会や食事会などで、石浦を勝手連的に応援している。

 数百年前をたどれば血縁関係があるかもしれない。石浦の父、祖父も出身は石川県。だから「会う人はみんな初めてなのに、最初から仲間意識、連帯感がありました」と石浦。新十両時に同会の宣伝部長に任命され、今場所から専務に“昇格”。もちろん任務は、全国の石浦姓に、土俵の姿で元気を与えることだ。【渡辺佳彦】