喜びよりも、安堵(あんど)感が勝っていた。横綱鶴竜(30=井筒)は優勝決定戦の末に、9場所ぶり2度目の優勝を飾った。

 横綱昇進から9場所目で、やっと手にした賜杯。「この瞬間のために、ずっとやってきた。やっとという感じです。良かった」と胸をなで下ろした。

 勝てば優勝で迎えた千秋楽結びの一番。大関照ノ富士(23=伊勢ケ浜)の力強い当たりに押され、右四つになって寄り切られた。座布団も舞う。何度もはね返されてきた過去が頭をよぎり「またダメかと、一瞬思いました」。

 ただ、一息ついて迎えた決定戦では、両前まわしを取った後、左に回って上手出し投げ。照ノ富士を土俵にはわせた。「最後に自分の相撲を取り切って終われたので、何より良かった」と大きく息をついた。

 横綱昇進から9場所目で手にした賜杯。さかのぼれば、12場所を要した24代前の47代横綱柏戸以来の遅さだった。重圧は場所を経るごとにのしかかり、加えて今場所は白鵬(30=宮城野)も日馬富士(31=伊勢ケ浜)もいなくなった。その重みに負けて、栃煌山戦と前日の稀勢の里戦で2度も注文相撲を取った。横綱らしからぬ相撲にブーイングや罵声も浴びた。

 自身も追い詰められた中で手にした横綱初優勝に「責任を果たせて良かったと思います。先が見えてきました。これで1つ自信になったし、励みになる。もっと頑張っていきたいと思います」と言った。批判を覚悟の上で勝利にこだわり、綱の重みを少し、振り払えた。だからこそ、今後の相撲が重要になる。これからの鶴竜に、横綱としての真価が問われていく。