夏場所で左アキレス腱(けん)断裂の大けがを負い、名古屋場所の全休を経て復帰した西十両10枚目の安美錦(37=伊勢ケ浜)が宣言通り、相撲で湧かせた。

 初白星を挙げた2日目に「出てくるだけで声援をもらうのは申し訳ない。相撲で応援してもらわなきゃ」と話していたが、この日は俵に足がかかりながら、踏みとどまって西十両14枚目の北太樹(33=山響)を押し出し。2勝目に「勝てば喜んでくれるし、頑張るしかないよね」と、一身に浴びた大声援を励みにした。

 立ち合いで変化されたが、しっかりとついていった。俵に右足がかかったが、あっさり土俵を割る姿もなかった。「右も膝が良くないから、なるべく俵にかかりたくないけど、立った状態でも上半身が丸まって全身に力が入っていれば、残せる。その形をしっかりつくろうと思った」。基本の型を貫き、右を差し、左ははず押し。反撃に転じて、押し出した。

 「(立ち合いで)当たろうという気持ちが強すぎて、昨日は当たった後に伸びちゃっていた。うまく反応できて、上半身で攻めていけたね。勝とうと思うと早く決めたくなっちゃうから、しっかり相撲を取ろうと思った。しっかり相撲が取れたんじゃないかな。出れば何とかなるだろうと思っていたけど、昨日で気持ちを切り替えて、しっかり相撲を取るんだと思ったのがいい方に向いたよ」。巧みな心の切り替え。ベテランのすべを見せた。

 帰りの時刻は午後3時すぎ。まだ日は高い。慣れない景色がある。「相撲を取るのが早いから、帰ってからが長いよ。国技館から帰るとき、やたら人が多いなと思ったら『そっか、まだ3時か』と思った。ここから来る人もいるんだよね」。ちょっぴり寂しがるも「その分、ゆっくりケアしてね」。残る10日間に向けて、時間を少しも無駄にしない。