映画界の巨匠、黒沢明監督(1910~98年)が初期に手掛けた映画やラジオドラマの脚本3本が、28日までに見つかった。黒沢作品をたどる上で貴重な資料といえそうだ。

 発見されたのは映画「棺桶(かんおけ)丸の人々」「明日を創(つく)る人々」と、ラジオドラマ「陽気な工場」の準備稿や本稿。浜野保樹・東京大教授(メディア論)が「大系

 黒澤明」(講談社)編さんの過程で確認した。

 兵庫県市川町の橋本忍記念館で見つかった「棺桶-」は黒沢監督のアイデアを基に脚本家の橋本さんが執筆。三船敏郎さんらの出演で51年に公開予定だったが、途中で製作が中止された。古い輸送船の船員たちが悪天候を乗り切るストーリーで「監督のアクション映画の系譜を知る上でも重要な幻の作品」(浜野教授)という。

 「陽気な-」は黒沢監督が助監督時代に書いた作品で、42年8月にNHKのラジオドラマとして放送、その後、早稲田大学演劇博物館に所蔵されていた。

 「明日-」は46年に東宝の労働組合が企画。他の監督との共同作品だが、黒沢監督は生前「自分の映画とは認められない」としていた。