俳優小栗旬が、時代劇映画「TAJOMARU」(来秋公開予定)に主演する。芥川竜之介の「藪の中」を原作とした映画で、同じく同小説を原作とした50年の映画「羅生門」(黒沢明監督)で三船敏郎さんが演じた多襄丸の役名を受け継いだ異色作だ。26日に26歳になった小栗が参加する広島県内の撮影現場を取材した。

 人気が急上昇の07年、トップスターとして走った08年。激動の2年を過ごした小栗の表情は、充実感であふれていた。萩原健一(58)や松方弘樹(66)近藤正臣(66)らベテランと対峙(たいじ)する日々に「すべてが学ぶことだらけです」と話した。時代劇歴約50年の松方には殺陣で胸を借り「めちゃくちゃ速くて、うわ~すげぇ~の連続でぞくぞくした。常に力を入れて刀を振ってしまう自分に(強弱をつけるコツを)教えていただいた」と感激。松方のひじ打ちでかつらが吹っ飛ぶこともあったという。

 原作は黒沢明監督が51年ベネチア国際映画祭グランプリ作品「羅生門」と同じ「藪の中」。「世界のミフネ」の第1歩を踏み出した多襄丸の名を継いだが「三船さんの映画も何度か見ました。偉大な人ですよね。でも、設定も物語も全く違うんですよ」。粗暴な“初代”とは正反対で「真っすぐに愛を貫く人間」として描かれる。同じ山賊でも洗練された衣装で白馬にまたがり「純粋な時代劇というより、極上のラブファンタジー映画」だと説明した。時代も「羅生門」の平安時代より数百年後の室町時代で、山本又一朗プロデューサーは「引き継ぐのは役名だけで、物語も多襄丸も全く別物」という意欲作だ。

 現代劇のヒット作出演が続いた小栗だが、来年は時代劇が続く。1月からは大河ドラマ「天地人」で石田三成を、3月の演出家蜷川幸雄氏の舞台「ムサシ」では、佐々木小次郎を演じる。そして「没頭して抜きどころがないほど、突き詰めている」という多襄丸。09年はサムライが旬になる。