米アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した映画「おくりびと」のロケは、主に山形県庄内地区で行われた。主演の本木雅弘(43)に納棺師の技術指導をした鶴岡市の納棺協会山形営業所長佐々木昭栄さん(38)は、受賞を知り「感動した」と喜んだ。

 13年の納棺師経験を持つ佐々木さんは受賞をテレビで知り「感動しました。鳥肌が立つような感覚があります」と話した。鶴岡市の納棺協会山形営業所で取材に答え「あまり日の当たる職業ではなかったが、すばらしい職業。それが、日本だけでなく世界にも知られることになり、一納棺師として、うれしい」と話した。

 佐々木さんは、映画スタッフの取材に協力したほか、本木にも07年春に3日間、技術指導を行った。納棺師は、遺体にドライアイスを添えるところから、納棺までを取り仕切る。どんな不手際も粗相も許されない緊張感の中で「誰が見てもどこから見ても完ぺきに美しい形まで仕上げる仕事」(佐々木さん)だ。寝間着を白装束に替え、顔の掃除をし、死に化粧をし、遺族とともに棺おけに入れ、ふたを閉じ、くぎを打つ。一連の儀式の基本動作を教えた。

 佐々木さんは当初、本木がやってくると聞き「シブがき隊の方とお会いできるとは思ってもみなかった」と驚いたという。ただ、指導を通じ、「非常にまじめで集中力があり、繊細な方」と感じたという。納棺師には「ひげ1本のそり残しも、鼻毛の切り残しも、化粧むらなどもないよう細かく気を配れる繊細さが求められる」といい「本木さんなら、いい納棺師になると思います」と話した。

 映画公開後、納棺師という職業が知られるようになり、同社には「納棺師になりたいのですが」などの問い合わせが多数ある。「社長を演じた山崎努さんのインパクトからか50~60代の方からの問い合わせも多く驚いた」という。納棺先で「タントウさん」としか呼ばれなかったのが「『納棺師さんが、最後にお化粧してくれたっけのう』と喜んでいただけるようになった」とも話す。「おくりびと」の受賞で、気持ちを新たに、仕事に臨んでいくつもりだ。【清水優】