ネット上にあふれる情報は、切り取り方によって見え方が違ってくる。実態を調べてみるとイメージはがらりと変わる。

 女優の矢吹春奈(31)を取材して、実感した。

 矢吹のことをざっとおさらいすると、18、19歳の頃には「完売クイーン」と呼ばれていた。彼女がグラビアに載ると、その雑誌は完売。出す写真集はいずれも実績を残している。6年前くらいから女優に軸足を移し、最近では映画「日本で一番悪い奴ら」(白石和弥監督)で、綾野剛演じる主人公の恋人役として生々しいラブシーンを披露した。ひと言でいってしまえば「セクシーな」と形容される人である。

 インタビュー前の下調べでネット検索してみると、ペットとしてニシキヘビの一種「ポールパイソン」を飼っている、とあった。なまめかしさを感じてますますグッと来る男性ファンもいれば、ちょっと退いてしまう人もいるだろう。ここは聞かねばなるまい。

 本人にとって、それほど意外な質問でもなかったのだろう。「ええ、飼ってますよ。太さはこのくらいになりましたかね」と右手の親指と人さし指を開いて6、7センチの直径を示した。「エサは月に1回、ネズミを食べさせるんです」と平然と笑う。このときは正直、ちょっと退いた。

 だが、重ねてヘビの魅力についてたずねると、要領を得た答えが返ってこない。そこで、「スカル」と名付けられたこのヘビを飼い始めた、そもそものいきさつを聞いてみる。

 「5年前、『くノ一忍法帖』という映画に出たときに、ヘビとの絡みがありまして。まあ、共演したんですよね。撮影が終わったとき、『この子はどうなるんですか?』とお聞きしたら、処分されてしまう、というんですよ。短い付き合いでしたけど、それではあんまりかわいそうだと思って引き取ることにしたんです。実はもともと好きなのは犬で、今も飼っているんですよ」

 ほっとする。ヘビ好きというよりは、そこにあるのは懐の深い動物愛ではないか。「ペットはニシキヘビ」という情報がもたらす「裸体にヘビを巻き付けた」ようなツヤっぽくも怖い妄想は霧散。童話の挿絵に登場する、ちょっとほほ笑ましいヘビの姿が頭に浮かぶ。

 続けて浮かぶ質問。「くノ一忍法帖」ではどういう設定でヘビと絡んだのだろうか。

 「私の演じた忍者はウナギのかば焼きを知らない、という設定でして、そこにヘビが…」

 5年前のスカルちゃんはきっとウナギサイズだったのだろう、と思う。だが、これは聞かなくてもいい質問だった。

 「ペットはニシキヘビ」から思い浮かべるイメージも、その背景を知るに従ってかように変化するのだ。

 矢吹自身、劇中の艶っぽさからは想像しにくいほど素顔はからっとした女性である。「完売クイーン」と呼ばれたグラビアアイドル時代の人気の理由について自己分析してもらうと「大胆になれたからですかねえ」。あっけらかんと言う。

 今年5月、篠山紀信氏によるヘアヌード写真集「春奈」を発表して話題になったが、「篠山先生からも『君、大胆だねえ』と言われました」。数多くの大物ヌードを手掛けた巨匠も、そのさっぱりした性格には感心したようだ。一方で、いざ作品に写し撮ると濃密な色気が漂うから不思議なものである。

 この大胆さ、おおようさは、ここまで、あそこまでと細かい制限も設ける最近の女優さんの露出事情を考えると貴重だと思う。

 男優の方はほぼ全裸なのに、女優は肩だけなどという不自然なラブシーンが多すぎる。欧米作品では、そんなことはほぼあり得ない。双方大胆か双方ちょい見せか、そこには統一感があり、アングルも自然だ。それが当たり前だ。

 なまめかしいシーンにもさらっと取り組むこの姿勢に期待は大きい。【相原斎】