今月12日未明にフロリダ州オーランドのナイトクラブで発生した米国史上最悪の銃乱射事件を受けて銃規制強化が叫ばれる中、多くのハリウッドセレブが規制強化を求める署名運動に参加しました。同性愛に反対する犯人がゲイクラブで銃を乱射し、49人が犠牲になる大惨事が起きた前日には、同じオーランドで2014年に音楽オーディション番組「ザ・ヴォイス」に出演した歌手クリスティーナ・グリミーさんがコンサート終了後に銃で撃たれて22歳の若さで亡くなる事件も起きたばかり。一向に進まない銃規制にハリウッドセレブたちが、一丸となって立ち向かう姿勢を示したのです。

 13日にロサンゼルスで行われた銃乱射事件の被害者の追悼式には、レディー・ガガが出席して涙ながらに「人類そのものに対する攻撃」とスピーチ。ジャスティン・ビーバーやセレーナ・ゴメスら多くのアーティストも自らのコンサートでグリミーさんを追悼するなど、相次ぐ乱射事件に音楽業界でも大きな衝撃が走りました。そんな中、今月20日に米上院議会で銃規制強化案採決の動議が否決されたことを受け、ガガやゴメスをはじめ、ケイティ・ペリー、ブリトニー・スピアーズ、アリシア・キーズ、カルバン・ハリス、クリスティーナ・アギレラ、ジェニファー・ロペスら人気歌手のみならず、ビリー・ジョエル、バーバラ・ストライザンド、トニー・ベネット、ポール・マッカートニー、シンディ・ローパーら大物ミュージシャン、アカデミー賞授賞式の司会者としても知られるエレン・デジェネレスやレコード会社の重役、プロデューサーら約200人が、音楽専門誌ビルボードの公開署名運動に参加。「銃の販売時に身分証明書の提示を義務づけること」「テロリストの容疑がある人物には銃を販売しないこと」の2点を求めています。同誌は「銃による暴力を今すぐにやめろ」というスローガンと共にアーティストたちのサインが寄せ書きされた表紙を7月2日号に掲載し、銃による暴力で毎日90人以上のアメリカ人が殺され、日常生活が脅かされている現状を訴えています。

 米国では銃乱射事件が起こるたびに銃規制の論議が起こるものの、国民の銃所有に関する権利を保護することを目指す銃愛好家団体「全米ライフル協会」の圧力によって規制強化が進まないのが現実。2012年12月にコネチカット州の小学校で26人が犠牲になった乱射事件の直後にも、ビヨンセやジェニファー・アニストン、キャメロン・ディアス、ジェイミー・フォックス、クリス・ロックら多くのセレブが、「銃による暴力を終わらせるプランの要求」と題したメッセージビデオを公開して銃規制を訴えたこともありますが、その後も同様の事件が繰り返されてきました。政界との強いつながりを持つ全米ライフル協会は、銃規制を訴えるハリウッドスターたちの実名をネットで公開して彼らの作品をボイコットするよう呼びかけるなど、露骨な嫌がらせをしてきたことでも知られています。

 多くのセレブが再び「銃規制」の声をあげたことで、二度と同じ惨事が繰り返されないことに大きな期待がもたれています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)