◆風に立つライオン(日)
アフリカ・ケニアで約1カ月撮影された映像を見て大沢たかお(47)三池崇史監督(54)の対談を思い出した。13年カンヌ映画祭コンペ部門出品作「藁の楯」公式上映後のことだ。
大沢 自分をより高いハードルに置かないと成長はない。三池さんと会い、最大限にやったら多くの人が見てくれる好機が来た。
三池監督 海外に合わせるのではなく、日本のままでやるのが本当の意味で世界に通用するということ。
今作は大沢が7年前、さだまさしが87年に発表した同名曲の映画化を熱望したことに始まる。大沢演じる医師が患者や自分と向き合い命や生きることの意味を考え、伝えていく姿に演技を超えた生々しい力を感じた。
三池監督は大沢から「メッセージは、さださんの歌に込められている。どう表現するかは皆さんのお仕事」と託されたという。酷暑など日本と違う環境で撮影し「他の映画で表現できなかったものが映った」と語った。
カンヌで語った2人の思いが結実した今作。現在の日本に最も必要な「血の通った人間愛」がにじんでいる。【村上幸将】
(このコラムの更新は毎週日曜日です)