米マーベルコミックから異色作が実写化された。身長1・5センチのスーパーヒーロー、アントマンは「アベンジャーズ」の姉妹シリーズ的な位置付け。壮快感は劣るが、完全無欠の英雄に飽きた人に勧めたい。

 主人公はもともと、徒党を組みコソ泥を繰り返す、どうしようもない男。ヒエラルキーの最底辺にいたが、偶然押し入った科学者の家から体を縮小させるスーツを盗んだことを機に、心を入れ替え、地球を守る任務を負う。

 ミクロの世界の描写が楽しい。バスタブから滝のように流れ落ちる水から逃げ回る姿。昆虫の背に乗り、草むらから飛び立つ姿。極小ヒーローだからこそ、笑える出来事の数々。もう少し、その世界感を見せてもらいたいほどだった。

 前妻との間の娘とのエピソードもホロリとする。元罪人と知らず、けなげにパパの帰りを待つ娘。大人の事情など関係ない、純粋な思い。家族で見てもらいたい1本でもある。

 この手のハリウッド映画には、いわゆる「最先端の研究所で開発された技術が、何者かの手によって盗まれ…」という流れが多すぎる。ワンパターンから、そろそろ抜け出せないものか。【森本隆】

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