スタイル抜群の美形トップ、宙組の凰稀かなめが2日開幕の兵庫・宝塚大劇場公演「ベルサイユのばら-オスカル編-」(6月2日まで)で、こん身のオスカルを見せる。74年の初演時から演出する植田紳爾氏(81)ら演出陣にも理想像をぶつけ、自宅ではバラの香りに包まれる。オスカル気分に浸り「究極のオスカル像」を作り上げる。東京宝塚劇場公演は6月20日~7月27日。

 節目の年の代表作。女に生まれながら男として育てられた軍人、オスカルは男役の憧れ。凰稀も幼稚園の頃、アニメ版を見ていた。

 「最初は(オスカルは)完璧な人間と思っていた。でも、悩み揺れながら成長していく。不器用なんですよ、オスカルは。自分の性格と似ている」

 クールなルックスの裏にある熱い心。「誤解されるタイプ」。悩んだこともある自分と重なった。原作を読み直し、男役としての共通点も再確認した。

 「原作のオスカルは、女性に対して男前。だから、ファンの方もオスカルに憧れる。絶対に女っぽくはしたくない。原作のイメージを壊したくない」

 女であるがゆえ、より男らしくあろうとした生きざまが軸。愛を知り、女がにじみ出る。宝塚版は、オスカルの女の部分が色濃い。

 「今回、お稽古中に先生(演出陣)から『もっと女の気持ちを』と言われ、意見の違いはありました。私も女として生まれたけど、男役を15年追求してきて、普段から自然に男性っぽくなる。(座位で)足を開いてしまうし。そんな自然さは、オスカルも共通しているはず。100周年という年にベルばらを上演するのだから、先生方に自分の意見を言うように」

 もちろん、長年愛されている宝塚版オスカルを大切にしたい思いもある。

 「宝塚のベルばらを作ってきた先生方の意見をいただきながら、ちょうどいいバランスを。時代を超えての意見のぶつかり合いは必要じゃないかと思います」

 昨年、雪組公演フェルゼン編に特別出演し、星組トップ柚希礼音のアンドレを相手に、原作のイメージに近いオスカルを演じた。

 「あの時のDVDを見直して、涙が出てきました。私、かわいそうだなって(笑い)。あの時、自分の公演が終わってドラマ収録で3日徹夜して、そのままお稽古だった。いっぱい、いっぱいで、出番の初日、バスティーユ(のアンドレが死ぬ場面)で私、舞台で初めて本気で泣いた。でも、追い込まれて出せるエネルギーのすごさが分かった。今回も、あえて自分をその状況にしました」

 今年も100周年の祭典、式典、その稽古や月組公演への特別出演などが相次いだ。その仕事が終わった日、そのまま稽古場へ。

 「月組(自身出番の)千秋楽の日に稽古に行き、本気泣き。緊張感、ピリピリ感が違う。オスカル自身、極限の中で突っ走って生きた。それを自分の中に入れようと思ったんです」

 前作「風と共に去りぬ」でレット・バトラーを演じたとき、泥酔時の心情を理解しようと、実際に飲酒を重ねてみた。

 「普段、お酒で記憶をなくすことが、まったくなくて。お酒、全然、大丈夫なんですよ。どうなのか味わってみようと思って」

 不器用な努力の人だ。酔った演技が高評価も得た。今はオスカルをイメージしてバラにはまっている。

 「部屋にバラのルームスプレーをまいて、気分をバラに。お風呂もバラの(入浴剤)とか。でも、バラの花びらは浮かべていません(笑い)。あと、寝る前にハーブティーを飲み、バイオリンを弾いたり」

 革命へ向かう波のはざまでオスカルは、夜にお茶を飲み、バイオリンを弾く。それを自宅で実行する。

 「バイオリンは、まったくできません! できないので、練習をしているんですけど。知人が弾いた動画を見て、指と音を確認しています。独学で」

 全身全霊でオスカルを作る。【村上久美子】

 ◆ベルサイユのばら-オスカル編-~池田理代子原作「ベルサイユのばら」より~(脚本・演出=植田紳爾氏、演出=谷正純氏) 74年初演の劇団代表作のひとつ。革命に揺れる18世紀の仏を舞台に、貴族の家に生まれ男として育てられたオスカルを軸に描く。昨年は「オスカルとアンドレ編」「フェルゼン編」。今年は、植田氏が「100周年のベルばら」と意気込む「オスカル編」を上演。

 ☆凰稀(おうき)かなめ 9月4日、神奈川生まれ。順心女子学園中を経て00年「源氏物語 あさきゆめみし」で初舞台。雪組配属。05年「霧のミラノ」で新人公演初主演。09年4月に星組、11年2月に宙組へ。12年7月、宙組トップ。昨年4月、雪組「ベルサイユのばら-フェルゼン編」にオスカル役で特別出演。同9月「風と共に去りぬ」でレット・バトラー。身長173センチ。愛称「かなめ」。