フジテレビドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」最終回で、姫川警部補(二階堂ふみ)が部下の菊田(亀梨和也)を救出するため、立てこもり犯に訴えた言葉です。脚本10ページ、7分間に及ぶ長ぜりふをモノにした二階堂姫川のすごみはネット上でも大きな反響となりました。リメークとあって作品全体の視聴率はいまひとつでしたが、内容がじわじわと支持され、最終回で自己最高の7・9%。次につながる評価と収穫を得ての幕となりました。

最終章として描かれた「ブルーマーダー」事件は、竹内結子版では放送されなかったエピソード。解体された姫川班のその後を描き、原作ファンの間でも特に人気の高い作品です。尊厳を奪われた者の、一生消えない殺意。自身も犯罪被害者として犯人と同じようなダークサイドを抱えてきた姫川が、「私たちには殺意がある」と、ついに自らの過去を語る姿が描かれます。

菊田の前で「17歳の夏」の出来事を語り始める姿に、1話からずっと見てきた受け手としては肝がつぶれる思い。粉々にされた人生への絶望と、加害者への殺意が今もどれほどのものか目をむいて語り、「私はそんなことばかり狂ったように考えて生きてきたのよ」。原作でもずしんと読み応えのあるあの場面がありありと映像になり、彼女の痛みに共感するうち、こっちの人生までえぐり出されそうな迫力がありました。

「この憎しみは、自分を大切に思う愛情の裏返し」であり、「私たちの中に、愛情もたくさんあるんだって、そういう風には認められないかな」。警察で仲間を得た彼女がどう成長し、伝えたい想いは何なのか。画面のダイナミックな緊張を体感しながら、「サーガ」はこのシーンのために再び作られ、1話から丁寧に描写を積んできたのだと感じました。タフにならざるを得なかった人のかっこいい優しさを、24歳の二階堂さんが生き生きと見せてくれて、忘れられない名場面になりました。

姫川の告白は、犯人越しに菊田に向けたメッセージでもあるんですよね。魂を受信し合いながらも、共に生きるパートナーには成り得ない特別な関係。泣かない姫川の代わりに菊田が静かに泣いていて、亀梨くんの首までつたう涙が美しかったです。

竹内版で菊田を演じた西島秀俊さんと比べられる宿命にはありましたが、亀梨の菊田もかなり魅力的でした。つかず離れず、絶妙な距離感と理性をキープしていて、「普通の人」の強さ、優しさを端正に描いていました。「サーガ」の2人は、菊田が姫川班に異動してくる形で初めて出会う設定。受け手は菊田を通して姫川の魅力を知っていくわけで、責任の重い役どころです。捜査会議での出会いから、最終話の病室での“別れ”まで、亀梨くんが大小さまざまな心の動きを目で表現していて、ハードで切ない物語にきちんと連れて行ってくれました。

静かな雨の音のラストシーンも、この作品らしい、いい余韻でした。姫川も菊田も、まだそれぞれの雨の中にいて、私の中では「これでいい」と「これでいいのか」が今も交錯しています。新しい関係になった2人とチームの再結集を予感させるせりふもあったので、また姫川班の活躍を見てみたいです。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)