12年ぶりに復活し、来年夏公開予定の映画「ゴジラ」新作の総監督と脚本を、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの監督で知られる庵野秀明氏(54)が務めることが3月31日、分かった。監督と特技(特殊撮影技術)監督は、今年8、9月公開の「進撃の巨人」を手掛け、庵野氏の盟友でもある樋口真嗣氏(49)が兼任する。

 60周年の昨年12月に復活が発表された「ゴジラ」が、日本屈指のクリエイター2人に託された。庵野氏は「ウルトラマン」を見て、現実に空想を紛れ込ませる特撮のとりこになった。樋口氏は「ゴジラ」を愛し、9年ぶりに復活した84年「ゴジラ」で映画界に入った。特撮愛を買った製作の東宝が、2013年1月末に両氏にオファー。庵野氏は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:--」の件もあり「無理です。出来ません」と断ったが、東宝の誠意と樋口氏の熱意に押され、同3月に総監督を引き受けた。

 2人は“黄金タッグ”だ。庵野氏が総監督を務めた90年のNHKアニメ「ふしぎの海のナディア」では樋口氏が監督を務めた。12年にはデジタル技術が進み、衰退していく特撮の小道具を全国から約500点集め、「館長 庵野秀明 特撮博物館」を開催。館長の庵野氏が企画と脚本、副館長の樋口氏が監督で、特撮短編映画「巨神兵東京に現る」を製作した。「風の谷のナウシカ」の巨神兵が東京の街をビームで破壊する衝撃の映像で話題を呼んだ。

 その歴史も踏まえ、庵野氏は「空想科学映像再生の祈り(中略)思想を具現化してこそ先達の制作者や過去作品への恩返し(中略)今だから出来る、1度きりの挑戦と思い引き受けることにしました。エヴァではない、新たな作品を自分に取り入れないと先に続かない状態を実感し引き受けることにしました」。樋口監督も「特撮という仕事に巡り合え、続けてこれたこと、この機会が巡ってきた運命に感謝しつつ、最高で最悪の悪夢を皆様にお届けします」と力説した。

 撮影は今秋に行われ、公開は来夏の予定。今回、ゴジラの足形も公開されたが、昨年公開された米国版「GODZILLA ゴジラ」の体長108メートルをはるかに上回る「過去最大」になる見込みという。

 ◆庵野秀明(あんの・ひであき)1960年(昭35)5月22日、山口県宇部市生まれ。幼少時からアニメや特撮に傾倒。高2で8ミリフィルム機材を購入し、実写やセルアニメの制作を開始。80年に大阪芸大に進学後も制作に没頭し、大学は授業料滞納で放校処分。88年の「トップをねらえ!」で商業作品の監督に挑戦し、95年のテレビ東京系「新世紀エヴァンゲリオン」が大ヒット。漫画家安野モヨコ氏と02年に結婚。

 ◆樋口真嗣(ひぐち・しんじ)1965年(昭40)9月22日、東京都生まれ。高校卒業後、アルバイトとして東宝撮影所に入り、84年の映画「ゴジラ」の造形助手に。同年、庵野氏らが設立した制作会社GAINAXに参加。95、96、99年の「ガメラ」3部作で特撮監督。06年「日本沈没」が興収53億4000万円、12年「のぼうの城」が同28億4000万円と大ヒット。