いまやテレビで顔を見ない日はないほどの売れっ子ぶりだ。柔道家・篠原信一(42)がブレークしている。190センチ、110キロの巨体、こわもてなルックスとは裏腹の、ひょうきんで奔放なキャラで人気を集め、公開中のアニメ映画「ポケモン・ザ・ムービー XY 光輪の超魔神フーパ」(湯山邦彦監督)でついに声優デビュー。激動の日々と人気の秘密を直撃した。

 篠原の勢いが止まらない。15年上半期テレビ番組出演本数ランキング(ニホンモニター社調べ)のデータでは、昨年の6から94に激増した。

 「別に面白くしている気はないです。(柔道の)現役、監督時代含め怖い、とっつきにくい雰囲気が世間に出ていただけ。いざテレビなどで普通にしゃべらせてもらうと『アホだな、あいつ。しょうもないこと言うな』ということだと思う。現状、何が良くて呼ばれているかいまいち分からない。呼んでいただけるんであれば応えたいしもういいやとなったら仕方ない」

 「ポケモン」では「ヒポ」のひと言でポケモン・ヒポポタスの感情を演じきった。一方、完成披露試写会では安田レイが主題歌「Tweedia」を歌っている最中に乱入しピカチュウの着ぐるみと踊った後、サビを歌って大暴れした。

 「『ヒポ』だけで感情を込めるのが、なかなか難しくて。歌はヘタな方だと思う。歌詞覚えられへんな、音程だけ外さんようにと。ちょっとトレーニングすれば、歌ったらミリオンセラーですよね…って書かないでください(苦笑い)」

 今年初めから妻が経営する産廃会社役員からタレントに本格的にシフトした。

 「たまに営業も行ったりしますけど、会社は任せています。テレビは現役の時もポツポツとは出させてもらっていたんですけど、柔道の監督を辞めてオファーが来た時、最初は出るつもりもなかった。会社の宣伝になるということで出たら、ご飯(収入)も増えてきたんで、せっかくだから出させてもらおうと。芸人のプロではないんで面白いことはできないですけど、ただ呼ばれているから出るのではモチベーションは上がらないので、テレビで見ている感じで真横でプロの方を見て、うまく回して盛り上げるなぁと思いながら勉強させてもらってます」

 一部で寝る間もないほど忙しいと報じられたが…。

 「寝ないくらいスケジュールが入ったら、やめますもん。1週間の中には、そういう(仕事が朝から晩まで)日も1日くらいあったとしてもアイドル並みに仕事が入るのは無理。1日6~8時間は寝ないとダメ」

 大学1年の長女を筆頭に高校2年、小学5、3年の息子の父。家族はブレークをどう見ているのか?

 「ぶっちゃけ全然、興味ないですね。特にお姉ちゃんなんか一番、興味ないと思いますよ。いつ放送されるかも聞かないですし、録画もしませんし、たまたま出てたら見る感じ。普段から、こういう感じなんで、妻や周囲からは『何が面白いんかな? 何で呼ばれんの?』と言われますもん」

 大ブレークを柔道に還元したいという思いがある。

 「現状は(柔道界から)外れているんで…直接、何かはできない。でも、僕のどこを見て言っているのか、よく分からないんですけど『篠原さん、柔道やってるんですか? うちの子にもさせます』と直接、言ってくれるお父さん、お母さんもいる。『あのデカいの、五輪や世界選手権で出てたんだ』と柔道に興味を持ってもらう…そういう人が増えればいいと思います。あれだけ(体が)大きくなったら、かなわんだろう、と思っている人も多いんじゃないですか…ハハハ」【村上幸将】

 ◆篠原信一(しのはら・しんいち)1973年(昭48)1月23日、神戸市生まれ。中1で柔道を始め育英高-天理大-旭化成。99年世界選手権2階級制覇、98~00年全日本選手権3連覇。00年シドニー五輪100キロ超級決勝でドゥイエ(フランス)の内股を内股すかしで返しながら、主審ともう1人の副審がドゥイエの有効と判定し銀メダル。01年4月天理大柔道部監督就任。03年の全日本選手権を最後に引退。08年11月に日本代表男子監督に就任も12年11月に退任。13年3月同大を退職し産廃処理会社マイドスの専務に就任。