柔道家篠原信一(42)が初著書「規格外」(幻冬舎)を出版した。柔道を始めた中学時代から、テレビなどで活躍する現在までをつづった自伝本。適当さもいいかげんさも隠さず、アスリートの自伝本という枠から見ると、まさに規格外の内容。このほど取材に応じ、著書に込めた思い、今の自分について語った。

 篠原は、出版依頼が届いた時を振り返った。「『ぶっちゃけ売れませんよ』って言ったんです。本を出すなんておこがましい! 今でもそう思ってます」。

 それでも話が消えることはなく、それならばと、本の方向性を提案した。「真面目に書くよりは面白おかしく書いた方がイメージが伝わりやすい。野村(忠宏)や井上(康生)が本を出してますが、男前やし、真面目な両者と比べれば、自分は180度反対。真面目に書くと『うそつくな!』となりかねない。自分が全面的に出るようにお願いしました」。

 希望通り自分をさらけ出した。冒頭のエピソードにもよく表れている。00年シドニー五輪の100キロ超級決勝戦。知られているように「世紀の誤審」で敗れてしまうのだが、「(試合前に)たばこを1本吸えてさえいれば、気持ちが切り替えることができて、もしかしたら結果は変わっていたのかも」とつづっている。そもそも代表選手は、たばこ禁止だったが、隠さずに書いた。大学1年の長女は「いきなりこんなん書いていいの?」と心配したという。篠原は「これも含めてお父さんなんだよって言うてます」。

 実は柔道が好きではなかったこと、強くなり始めたころの話、日本代表の監督就任と辞任、廃棄物関係の会社を立ち上げ、タレント活動をする現在、家族の話など、飾らない言葉やエピソードで自分をさらけ出している。「この本の中にあるのが本当の自分だと思ってくれれば」。妻も「あんたが本? 売れるの?」と懐疑的だったが、今では「いい感じになってる」と太鼓判を押しているという。

 自伝本というより「自分本」に仕上がったが、読者へのエールも忘れない。「篠原がこんな適当にやってていけるんやったら、俺でもいけると思えます。六四、七三…いや、八二くらいで、なるほどって思わすようなこと入ってる。考えているようで考えてない、考えてないようで考えてるんです」。

 監督時代から「規格外」と言われ続けた。「確かに自分は規格外。体が大きいおかげで世界選手権も五輪も出られた。今は顔の大きさでインパクト与えてる。それがあっての自分。これから僕の座右の銘は規格外です」。今後について聞くと「まだドラマや映画、お芝居の話が来てませんからねえ。おかしいなあ」と笑った。規格外の人生を目いっぱい楽しんでいる。【小林千穂】

<最近話題になったアスリートの著書> 

 ◆野村忠宏「戦う理由」 五輪3連覇、40歳まで現役を続け見つけた戦う事の意味。

 ◆井上康生「ピリオド」 柔道に打ち込んできた日々、五輪、などについてのエッセー。

 ◆松岡修造「松岡修造の人生を強く生きる83の言葉」 12万部を超えるベストセラー。昨年9月に発売された日めくりカレンダーも85万部の大ヒット。

 ◆長谷部誠「心を整える。」 メンタルコントロール術を中心に書かれた。135万部を超えるベストセラー。

 ◆五郎丸歩「不動の魂」 ラグビーとの出会いから、日本代表に至るまでを振り返っている。