原節子さん死去のニュースから一夜明けた26日、自宅があった神奈川県鎌倉市や、代表作の映画「東京物語」のロケ地だった広島県尾道市では、昭和の大女優を悼む声が上がった。「優雅な姿が心に残っている」「寂しい」。東京都内の映画館や書店には急きょ、献花台や特設コーナーが設けられた。

 鎌倉市川喜多映画記念館では原さんが数々の映画作品に出演した小津安二郎監督の特別展を開催中。来月同館で上映される、東京物語のチケットを買いに来た同市の会社役員北原尚さん(63)は「売り切れてしまうと思って慌てて来た。優雅で美しい姿が印象に残っている」と話した。

 仕事で鎌倉を訪れた堺市西区の男性会社員(52)は「昭和の大スターで、神秘に包まれている人だった」と振り返った。

 東京物語が撮影され、原さんも当時宿泊した尾道市の旅館「竹村家」の4代目武田敬子さん(50)は、尾道駅にファンが押し掛けたことなど、先代から当時の思い出話を聞かされて育ったといい「心配していた。亡くなったと聞いて本当に寂しい」と悲しんだ。

 東京都中央区の映画館「東劇」では東京物語と「晩春」などのデジタル修復版を上映中。原さん死去が報じられ、26日朝、献花台を設置し、ポスターや資料を展示した。千葉県から見に来た高橋直之さん(62)は「笠智衆さんも原さんも亡くなってしまい、がっくりしている。ここで上映していてくれて良かった」と懐かしんだ。

 東京都渋谷区の代官山蔦屋書店では原さんの出演映画のDVDや関連本を集めた特設コーナーを設置した。ベルリンから休暇で訪れているドイツ人男性(57)は「子どものころ日本に住んでいて、原さんの映画をよく見ていた。原さんはイングリッド・バーグマンのよう(な美しさ)で大好きでした」と話した。