安田顕(41)が30日、東京・テアトル新宿で行われた主演映画「俳優 亀岡拓次」(横浜聡子監督)初日舞台あいさつで、この日、乗車したJR山手線で誰にも気付かれなかったとボヤいた。

 安田はこの日、渋谷で舞台あいさつの支度をして新宿に移動するため、山手線に乗車した。ところが「もう少し(人気を)実感させてほしい。山手線に乗るのは当たり前なんですが、最近、映画の宣伝にかなり出てるのに、普通に帽子を取ってバーッとやっても…1つも気付かれない」と肩を落とした。

 安田は人気劇団ユニット「TEAM NACS」のメンバーで、日刊スポーツ映画大賞やブルーリボン賞など、国内各映画賞の助演男優賞にノミネートされ続け、TBS系ドラマ「下町ロケット」でも、町工場の熱い技術者を演じ、お茶の間の人気も高まっている。その安田が、山手線に乗って会場に来たということ、さらに、誰にも気付かれなかったことに、客席からどよめきと失笑が起きた。

 前日29日夜、東京・渋谷で、安田の所属事務所クリエイティブオフィスキュー会長で、HTB(北海道テレビ)制作の人気バラエティー番組「水曜どうでしょう」の“ミスター”ことタレントで監督の鈴井貴之(53)が、同番組の藤村忠寿ディレクター(50)とトークショーを開いた。その中で、鈴井は安田について「ブルーリボン賞ノミネート…こう(大きく)なって。うれしい反面、かわいそうですよ。今日、記者さんもいらっしゃってますけど、いろいろなところで(パパラッチに)狙われてますよ」と語ったが、実態は違ったようだ。安田は「もう少し後ろ指をさしてくれないと…実感がない。もっと撮ってください!!」とリクエストした。

 この日は、共演の麻生久美子(37)と原作の同名小説を書いた作家で俳優の戌井昭人氏も登壇した。麻生は安田について「撮影現場で、こんなに面白い人じゃなかった。セットのように、そこ(現場)にいた」と笑った。また芥川賞候補に5回ノミネートされた戌井氏は、各映画賞の助演男優賞にノミネートされながら、受賞に至らない安田から「ノミネートはされるんですが、受賞されないとどうですか?」と聞かれ「慣れが出てきます。慣れないように…」と苦笑い。安田も「慣れちゃうかも」と言い、苦笑した。

 安田は01年に北海道を中心に公開された、鈴井貴之監督のインディーズ映画「man-hole」に主演したことはあるが、「俳優 亀岡拓次」は全国規模で公開する映画として初の主演作となる。横浜監督が09年「ウルトラミラクルラブストーリー」以来、7年ぶりに長編映画のメガホンを取った。安田が演じた亀岡は、声がかかれば大作から自主映画までどこの現場にも駆けつけて監督に信頼される一方、主演の声はかからず、それでも不満を言わない、欲のない37歳独身の脇役俳優という役どころだ。そんな亀岡が、ロケ先の長野県諏訪市で一目ぼれする、居酒屋の若おかみ安雲を麻生が演じた。