声優で歌手の田村ゆかりが13日、公式サイトのブログを更新し、同日、発表されたキングレコードとの契約終了と冬ライブの開催断念について「いつも支えてくれている皆さんへ。」と題し、自らの言葉で語った。

 「突然の発表で驚かせてしまってごめんなさい。そして、心配してくれてありがとうございます。見るの怖いなぁ・・って思いながらも、ツイッターなど見させていただいています。これは私が自分らしくあるために、たくさん悩んで、いっぱい考えて出した答えです。ここで、新しい場所をお知らせ出来れば、みなさんに安心していただけるのだと思います。ですが、まだお知らせできない私のふがいなさを許して下さい」

 契約を終了するキングレコードと、同社の三嶋章夫プロデューサーに感謝した。

 「今まで大切に育ててくださったキングレコードさんには本当に感謝しています。以前のメーカーさんから移籍をする際に、『ゆかりは絶対にラジオを続けた方がええんや』と、キング内で、なんの実績もない私がラジオを継続できるよう、走り回ってくださったのは、当時プロデューサーだった三嶋さんでした。地上波のラジオで番組を持つのは、とても大変なことです。実績0の私なんかのために、いろんな方に頭を下げて番組が続けられるようにしてくれたんです。いたずら黒うさぎ(文化放送で03年から放送中の「田村ゆかりのいたずら黒うさぎ」(土曜深夜0時))13年間。はじめは、いつもの人見知りでツンツンおどおどしていましたが、スタッフのみなさんのおかげで、自由に楽しく番組を続けることができました。30分番組では珍しく、2本録りではなく毎週1本ずつ録音。別に2本録りでもいいんだけど、なんとなく。毎週の方が、みんなの顔が見える気がして。ハガキの文字を見たら『あの人だ』って思い浮かぶ。消印を見たら『あの人かな?』って思える。そんなあたたかい空間が大好きでした。他の番組にくらべたら、うちの番組はスペシャルな事は少なかったけど、それでも、毎週かならず声を届けることが出来る。私は、それだけで、十分だったんです。ずっと聴いてくれてありがとう。久しぶりに聴いたよって方も、昔聴いてたって方も。あなたの、大切な時間を預けてくれてありがとう。いつか時間がたった時に『あんな事あったなぁ』ってふと、思い出してくれたら、とてもうれしいです。」

 そして、歌手活動の継続を、あらためて宣言した。

 「契約は終了しますが、歌を歌うことをやめるわけではありません。逃げたくなる時も、目を背けたくなってしまうこともありました。CDが全然売れなくて、もう次は出せないかもしれない。そんな時に、当時のメーカーの方に『この子のCDをもっとださないと! 絶対伸びるから!』と後押ししてくださったのも三嶋さんでした」。

 「当時は、違うメーカーでA&Rとして接してくださっていたのですが、その強い言葉があったから続ける事が出来ました。他メーカーの私にアニメの主人公とタイアップを持ってきてくれたり、『どうして、ここまでしてくれるのだろう?』と不思議に思っていました。『歌を歌う』誰にでも出来ること。だけど、私だから歌える歌もある。そういう事だったんだと勝手に思っています。私は決して歌がうまい方ではありません。声量だってびっくりするくらいありません。それでも、そんな私だけに歌える歌。三嶋さんは、ずーっと昔から見抜いていてくれてたんだと思います。プライベートの悩みにも親身になって相談に乗ってくれていました。出会ったばかりの頃から、これまでずっと」。

 「夜中に長電話なんて当たり前。『俺は担当したアーティストは全ての事を最優先で面倒みるんだ! シモの世話だってする覚悟や!』なんて冗談で言ってくれるくらい(笑)あ、もちろん、これは本当に冗談ですよ! 変な誤解しないでくださいね。普通は、歌を作るときにはメーカーさんの意向が反映されたりするものですが、私の場合は、とても自由にやらせてくださっていました。タイアップでどうしても! って決めごとがあっても、キングレコードゆかり組のディレクター陣は、踏ん張って踏ん張って、少しでも私が思い描く形に近づくようにがんばってくれていました。嫌な思いもつらい思いもたくさんしていたんだと思います。だけど、それは私にはみせずに」。

 「ただただ『ゆかりさんの為に』とがんばってくれていました。『ゆかりがもう歌いたくない!って思うまで協力する!』三嶋さんは、いつもそう言ってくれていました。そして、それは、きっといまでも」。

 三嶋氏に感謝しつつ、同氏と見解の相違があったことも、今回の契約終了につながったことを示唆した。

 「今回、私のわがままで、契約終了という形になってしまいましたが、三嶋さんはそっと背中を押して下さいました。言いたいことはたくさんあったでしょう。だけど、恩知らずの私に何も言わず『わかった』と言ってくれました。だんだん顔をあわせる機会が少なくなり、意思の疎通がうまく行かず、意見が食い違う事も増えていました。それでも、多くを語らず背中を押してくれました。お嫁に行く娘にするように。話し合いの時に、意地を張っていた私は、三嶋さんにきちんと伝えられなかった言葉があります。そして、三嶋さんと最後にあった時の顔が悲しい顔だったのが心残りです。たくさんの私の大切な歌たち。歌い続けて、もっと人間的に成長して必ず恩返ししたいです」

 そして、40歳になる節目の今年に、大きな決断をした胸の内も吐露した。

 「40という人生の節目の無謀な決断を許してくれてありがとうございます。正直、不安だらけです。自分に何が出来るのか、まだ必要とされているのか。『みんながいないと生きてる価値がない』うそではありません。本当の気持ちです。だけど。あなたたちひとりひとりが支えてくれているから価値がある。そう思っています。簡潔にしようと思ったのに、長々と書いてしまいました。読みにくくてごめんなさい。たくさんの思い出があふれてきて、とても書き切れないです。キングレコードにいた9年間。楽しかった事がいっぱいです。たくさんの人がいたけど、うちは変なスタッフさん多かったなぁ(笑)みんなみんな。大切な思い出。大切な宝物。これからも。私が私らしくあるために前向きにがんばっています。私が『前向きに』とか言うとうそっぽいかな? だけど、ここに書いてることは、全部、私の本当の気持ちです。たくさんの感謝と、少しの勇気をもって歩いていきます。基本的にはネガティブですけど(笑)これからも、きっとみなさんを不安にさせることでしょう。もやもやさせることでしょう。こんな私だけど、側にいてくれるとうれしいです。これからも、たくさんの思い出を一緒に作っていけたらうれしいです。そして、最後にあの時伝えられなかった『ありがとう』の花束をいつか届けさせてもらえるように見守っていて下さい。私の大切なみなさんへ。愛をこめて」(原文のまま)

 田村は10日に公式サイトを通じ、冬ライブの開催断念、03年から放送中の「田村ゆかりのいたずら黒うさぎ」(土曜深夜0時)を3月26日放送回で、07年からインターネット配信中の姉妹番組「喫茶 黒うさぎ~秘密の小部屋~」も同25日で終了すると発表した。3月20日にスタッフのツイッターアカウントを閉鎖し、翌21日には公式サイトもリニューアルに入り閲覧できなくなるとした一方で、公式ファンクラブの運営会社を4月1日から移管することも発表していた。

 そして13日に、所属レコード会社と所属事務所、オフィシャルファンクラブの連名で、キングレコードとの専属契約が20日で満了となることを発表。その中で、キングレコードは音楽活動の継続を希望したが「田村ゆかり本人の今後の活動についての意向を尊重し、契約終了とさせて頂くこととなりました」とした。「田村ゆかり2016冬ライブ」については、「ライブ開催へ向けてこれまでの運営方法を鑑み、本人へ制作体制の見直しの申し入れを行いました。ファンの皆様へのご期待に応えるべく、度重なる調整を行いましたが、本人の強い意向によりライブの開催を断念せざるを得ない状況となりました」とした。今後の活動は、リニューアル後の田村ゆかり公式サイトで行うという。