世界最高峰の頂で東日本大震災の復興を願う。福島市出身の俳優なすび(40)が5日、4度目のエベレスト(8848メートル)登頂に挑むため、成田空港からネパールへ出発した。

 なすびは出発前、あらためて「震災から5年が経過し、この現状を絶対に風化させてはいけない。東北に夢と希望と元気を与え、これからも目を向けてもらえるためのきっかけにしたい」と語った。

 震災後、自身に出来ることは義援金支援ではなく、「命懸けで困難を乗り越えて前向きな姿を見せること」と考え、エベレスト登頂を決意。周囲からは復興と無関係なことに「売名行為」などと大反対された。

 しかし、“登山素人”に対してエベレストは甘くなく、3度失敗。13年の初挑戦は天候悪化により、残り標高100メートル地点で下山。14年は雪崩事故で断念し、昨年はネパール大地震で被災した。一度は諦めかけたが、「世界一の山で福島へ向けてメッセージを送りたい」。この強い思いが、4度目の挑戦を後押しした。節約のために地方へ行く際は高速バスを利用したり、募金で資金集めをした。1回のエベレスト登頂には、入山許可やガイド費用などで計1000万近くかかるという。

 また、昨年11月26日から3月27日までは仕事の合間を縫って、被災地の沿岸で整備が進む自然歩道「みちのく潮風トレイル」を歩いた。青森県八戸市から福島県相馬市までの全長約900キロを44日間で踏破した。

 芸名のなすびは、ナスのような約30センチの長い顔から付けられた。日本テレビ系「進ぬ!電波少年」で98年から1年3カ月「懸賞生活」を送って注目された。現在は、地元福島を中心に俳優やタレントとして活動している。