12日亡くなった大橋巨泉さんは、数々の流行語や人気番組を世に送り出した「テレビの申し子」であるとともに、新しいライフスタイルを常に提示してきた「時代のパイオニア」でもあった。

 終戦直後、一気に押し寄せた米国文化の中で、巨泉さんが最も影響を受けたのがジャズ。「束縛からの解放」の時代、その象徴ともいえる音楽の評論活動を通じて、名を売った。

 1953年にテレビ放送が始まると、音楽を通じて番組制作に関わる。新しいメディアであるテレビの可能性をいち早く見抜いた巨泉さんは、放送作家として活躍した後、66年に「11PM」で司会者に転身。豊富な知識、独創的な流行語、当意即妙な受け答えで一躍人気者になった。

 日本が高度経済成長の道をまっしぐらに歩んでいた時代、同番組で競馬や将棋、ゴルフなど、スポーツや趣味を積極的に取り上げ「仕事と遊び」の両立を呼び掛けた。低俗番組との批判をよそに、経済繁栄に続くレジャー時代を先取りした。

 90年、長寿社会の到来に伴い、シニア生活のあり方が問われるようになると「体力のあるうちに余生を楽しみたい」と「セミリタイア」を宣言。出版やテレビ出演などメディアを通じての発言を続けるなど社会との関わりを保ちながら、自らのライフスタイルは守るという生き方を実践し、多くの中高年世代に影響を与えた。