今年1月に亡くなった3代目桂春団治さん門下の桂小春団治(58)が14日、大阪市内で独演会の取材会を開き、亡き師匠が苦戦した「宇治の紫舟」に挑むことを明かした。

 独演会は毎年恒例で、古典と新作の2本立て。今年は、10月15日に大阪・ドーンセンターで行う。

 小春団治は77年に春団治さんに入門。「宇治-」は、絵に描いた女にほれた若だんなの様子を探りに行く手伝いの熊五郎を描いたネタで、小春団治が「師匠がやってるのを数回しか見たことがない」という作品だ。

 春団治さんは得心するまではなしを高座にかけず、持ちネタの少なさで知られた。小春団治によると、その春団治さんは、神戸の落語会で、このネタを指定され「やりたくないねんけど」とつぶたいたと言い、生涯で、小春団治が弱音をはく師匠を見たのは、この1度だけだったという。

 その理由は「熊五郎の人(にん=キャラクター)がどうしても出せん」ためだったそうで、春団治さん自身、納得のいく仕上げになかなかならかったそうだ。

 そのネタを今回、小春団治は「師匠がやり残した、完成できていなかったネタを自らやってみようと思った」とし、春団治さんが40代のころ、高座にかけた音源を探して練習。ネタの舞台となった宇治の観光名所なども筋に取り入れ、小春団治風オリジナルに仕立て、披露する。

 小春団治は「春団治は、こんなネタもやっていたんだと、知ってもらう意味でも、挑戦したかった」とも語った。

 新作は「とっても大好きDRYもん」。大人の対応をする“DRYもん(ドラえもん)”が、依頼者にドライに接して、渋々、アイテムを出していくストーリーを演じる。