ビジュアル系ロックの「2大カリスマ」と言われるディル・アン・グレイとピエロが、今夏に横浜アリーナで行う初のジョイント公演「ANDROGYNOS」の事前予約に申し込みが殺到していることが13日、分かった。

 同公演は7月7、8日の両夜、行われる。常に対立してきたバンドの競演だけに「宗教戦争勃発」と言われるなど注目度も高い。このため新たに「立ち見席」の予約も決定するなどうれしい悲鳴を上げている。

 ディル・アン・グレイとピエロは、ビジュアル系のバンドが全盛期だった95年後半から00年代前半にかけて“2大カリスマ”として人気を集めた。特に、東京・原宿の神宮橋には、双方のファンが詰めかけ、コスチュームで競い合い、その後「2つの宗教(バンド)の信者(ファン)による抗争」にもつながり、ファンの間では「神宮橋の宗教戦争」として語り継がれてきた。

 今回のコンサートは、その“2大カリスマ”が同じステージに立ち演奏で戦うだけに、ビジュアル系ファンにとっては「今年、最大のイベント」と盛り上がっている。主催者も、ファンのモチベーションを高めるために、さまざまな工夫を取り入れている。

 その1つが「会場の配置」だ。ステージは「危険地帯」とし、ステージの最前列を「前線基地」、さらに、その周囲は「緩衝地帯」、そしてセンター席の後方を「中立地帯」、スタンド席を「非武装地帯」と細かく分けている。さらに、座席内には両バンドの曲目が使用されている。会場内の趣向を凝らした配置はファンにも大好評で。チケットの予約が殺到していることから、一般販売を前に新たに「立ち見席」も追加することを決定した。「ステージとファンが一体化するような公演にしたい」と関係者。

 ディル・アン・グレイは、今年、結成20年目を迎える。「世の中の矛盾や人のエゴから発生するあらゆる痛みを世に伝える」ことをコンセプトに結成した5人組。インディーズ時代からコンサート中心の活動を続け、ビジュアル系ロックの雄として圧倒的な人気を誇る。

 特に、06年以降は活動の範囲を世界に広げ、アジアはもちろん全米やヨーロッパなどでも活動を展開しており、英国の老舗ロック誌「KERRANG!」では表紙にボーカルの京が日本人アーティストとして初めて登場し大きな話題を呼んだ。また、米ビルボード誌では「異色の日本人ロック・グループ」として異例の大特集もされたが、11年の東日本大震災以降は「日本の背負った痛みを全身で表現している」と評価する声も多く、さらに人気も高まっている。

 一方、ピエロはメンバーはボーカルのキリトを中心にアイジ、潤、KOHTA、TAKEOの5人組。メジャーデビューは98年だが、活動開始は95年。デビューの翌年には、デビュー最短で日本武道館公演を行い話題になった。また、米ロックバンドのマリリン・マンソンやメガデス、ミスフィッツなどとも異色のコラボレーションを繰り広げた。

 その後も、アリーナ級の会場でのライブを繰り広げ、ファンを増やしていったが、06年4月2日の東京・日比谷野音でのライブを最後に突如、解散を発表、その後はコンサートはもちろん、釈明もしないままファンの前から姿を消していた。ロック業界からは「現在のロックシーンを先導する数多くのバンドにも影響を与えてきた存在だった」と悔やむ声が多かったが、3年前の14年10月に、さいたまスーパーアリーナで2日間のライブを突然に敢行、ビジュアル・ファンを熱狂させていた。

 また、公演を盛り上げるため、14日から1週間、「ディル・アン・グレイ号」と「ピエロ号」と名付けたトラックが都内を走行する。関係者は「ライブに先駆け2台のトラックを神宮橋で遭遇させるかどうか検討しています」と話している。