女優石橋静河(22)が、初主演映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(石井裕也監督、27日全国公開)公開にあたりニッカンスポーツコムのインタビューに応じた。3回目は、俳優で歌手の石橋凌(60)と女優原田美枝子(58)の次女であることの葛藤、それを乗り越えられた初主演作について赤裸々に語った。

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 -両親の存在はプレッシャーだった

 石橋 プレッシャーでは…ないですね。でも、そういうふうに見られることが、小さい頃から本当に自分の中で葛藤だったというか。(2人の)お子さんで、すごいですねと言われるのが、本当に嫌だったんですよ。ずっと、そうだったな…というのを最近になって感じることがあって。小さい頃は、1番やりたくないことは女優、お芝居することなんて、死んでもやらないと思っていたんですけど。(嫌だというのは)芝居をすることに対しての感情ではなくて(両親の娘であると言う)人たちは、どういうふうに思ってそう言っているんだろう? というのが分からない…(芸能界は)いろいろな思いがある世界だし、それがすごく怖かった。

 -それでも、バレエやダンスから女優に転身した

 石橋 ただ、お芝居にひかれていったのは、見た時に面白いな…ピュアな芝居をするということだったら、やってみたいと思ったから。私が芝居をする1番近くにいる(サポートしてくれる)周りの人が、私がやりたい、本当の思いを感じながら見ていてくれるので、自分のかたくななところが、ほぐれてきたと最近、やっと感じるようになってきて。ちょっと前から「娘さんなんですね?」と言われることが増えてきた。以前は、そう言われたら、まずブロックをかけるというか、「はい、そうです」と言って、そのまま流してしまいたかった。「そう(石橋と原田の娘)じゃなくて、私と話しているでしょ」っていうことを、すごく感じていた。でも…自分の中で(そう感じることが)何か違うかも? って最近、感じ始めていて。

 -具体的に言うと

 石橋 娘だからとか、そういうことじゃなくて、純粋に役者、表現者として両親を見た時に、純粋な表現者なんだな、すてきだなと思うので。それを自分が否定してしまうのって、何か、ある意味、自分の体を全て否定しているようなもので…。そこに今、自分の中で違和感があるというか、自分自身が持っているものを否定しなくなった時に、1番自分らしくいられるのかな、ちゃんと伝わるようになるのかなと感じ始めています。

 -今回、初主演の映画、確固たる自分の作品を作り上げたからこそ、そう思えたのでは?

 石橋 そうかもしれないですね。自信になったと言うよりか…この映画を作った時に、自分の中(内面)がグチャグチャになったような感覚、全部壊された、メチャクチャにされたって感じたんです。けれど…それが、だんだん、いらないものを取ってもらった感覚になった。それまであった、自分が言われることで自意識過剰になっていた部分とか、いろいろなことを言われたくないと思うことに頑固になっていた部分、自分を守ろうとして見せないようにしていた部分を、捨ててもらったような感覚があるので。だから…多分、そういう意味で、今回の映画は大きいと思います。

 -両親、家族に映画を見てほしい?

 石橋 う~ん…まぁ、見てもらったら、うれしいですね。どうなんですかねぇ(笑い)

 -母は、石井監督の14年「ぼくたちの家族」で母子を演じた、池松について何か語っていたか?

 石橋 それはないですけど…でもお母さん役だったから(池松のことを)どこか、母親的な視点で見ていたのは感じるし…。それは(母と池松)2人の関係ですから。池松さんも、母と共演したことがあっても、じゃあ、あなたはどういう人なんですか? という感じで私に接してくれたので、すごく安心できました。

 -人間的にも磨かれた

 石橋 自分が娘だとか言われる部分に対して、そこに自分の意識がいっていた。そうじゃなくなったところが、あると思います。良かったです。

 -池松と2人で演じた美香と慎二の恋愛は、セクシュアルなところを描かないのが、この作品のこだわり。今の若者を象徴しているように見える

 石橋 私は、この2人の関係が本当に、すごくすてきだと思っていて。ちゃんと自分のいろいろな部分をさらけ出して、ぶつけて、それが返ってこなかったり返ってきたり、相手から投げられるものを受け取ったり、拒絶してみたり…その過程がものすごく長いし、結果は映っていないし、2人がこの後、どうなるかは分からないですけど、その過程が、この映画の全てじゃないですか。私の世代の人は、あまりにも伝える方法がいろいろな形であり過ぎて、どんどん軽くなって、本当に伝えたいことが自分でも分からなくなって、伝わらなくなって…すごく寂しい感じがします。

 -美香の女子寮の前に行って、中に入れなかった慎二は一晩、外で夜を明かす

 石橋 あんなことをされたら、本当にうれしいですよね。美香としては、慎二に「お前、どうするんだ」って試しているわけじゃないですか。今、いろいろな人が恋愛に対して、混乱しているんじゃないのかなと思います。誰も分かっている人なんて、いないのかもしれないですけど。純粋だからこそ、2人は変だと思うんですけど…恋愛に限らず、人とそうやって関われることって、ものすごくすてきなことだと思って。

 -最後にメッセージを

 石橋 私は、この映画は鏡のようなものだと思っています。見る人が今、何を感じているのか、どういう人なのかで見え方が変わる…ある意味、自分の中の感情を浮き上がらせてしまう映画なのかなと思う。映画館を出て、街に出た時に、少しでも、何かしらが残っていたら、すてきだなと思います。。すごく自由に見ていただけたら…感じたままで見てほしい映画です。

 石橋静河にとって、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は、1本の小さな流れから女優という大河にこぎ出した、船のような存在なのかも知れない。【村上幸将】

 ◆石橋静河(いしばし・しずか)1994年(平6)7月8日、東京都生まれ。4歳からクラシックバレエを始め09年から米ボストン、カナダのカルガリーにダンス留学。13年に帰国してコンテンポラリーダンサーとして活動。15年から女優業に進出し16年にNODAMAPの舞台「逆鱗」に出演。映画は17年に「PARKS パークス」(瀬田なつき監督)、「うつくしいひと サバ?」(行定勲監督)が公開。