脚本家の西田征史氏(42)が、監督2作目の映画「泥棒役者」公開を記念し、ニッカンスポーツコムのインタビューに応じた。最終回は40代になり、父親になって感じた心境の変化、そして日本屈指の人気脚本家が感じた衰え…その中で、死について考えるようになったという最近の思い、さらに人気アニメ「TIGER&BUNNY」の今後についても話を聞いた。

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 -近況は

 西田氏 (漫画などの原作がなく、自ら企画、原案を考えた)オリジナル脚本は、自分の分身なんだなとも思うと…子どもが去年(16年)ようやく生まれたんですよ。自分も、いろいろな感覚が変わりつつあるし…年、取ってるなぁという感じですね。40歳を超えて、白髪も増えました(苦笑い)大げさな話、死が近いなと思ったんですよ。毎日のように考えますね。40代で衰えを感じ始めた一方で、息子を見ていると前向きで、生きるパワーの固まりじゃないですか? こっちは、衰えているなと。だから、ハートウォーミングな世界で家族愛を書きたいとか、そういうことじゃなくて、残された時間とか、下り坂に入った人生に対しての物語のアイデアが割と、よく思い浮かぶので、そっちと向き合ってみたいなという思いですね。

 -死への恐怖は

 西田氏 息子が生まれたことで、怖さはないかもしれない。(子どもが小さいうちに亡くなることも考え)生命保険もかけていますし、いなくなっても生きていけるようには今、しているので…その時は、その時かなと思っていますけど。

 -下り坂が、今後のテーマ?

 西田氏 ダイレクトじゃないにせよ、そっちの感覚も身に着けたというか。リアルに35歳を超えて、あぁ、こうなっていくんだなとか。今まで、想像は出来たとしても(実感は)ないじゃないですか。面白くもあるんですよ。40代でそうだから50、60代で、また違うと思うんですよ。その世代ごとで感じるものがこの先、生まれてくるんだったら、もっと書きたいものが、その都度、出てくると思いますよね。

 -死んだら、どうなるんだろうと考えることは?

 西田氏 これで死んでも、子どもを残せたというのが1つ、あるので。

 -生命というテーマで作品を作る可能性は?

 西田氏 本当は書きたくもありますけど、子供が生まれて、そっちに走るのもベタかなと。そうじゃない見方で新たに…というと、逆に衰えとかの方が、自分らしさかなと思ったので。

 -1番、衰えを感じるのは書くスピード?

 西田氏 単純に記憶力ですよね。頭のさえも、ちょっと不安で1回、脳を調べたら、単なる老化ですと。記憶力とか、今まで入ってきていたものが全然、積み重なっていない。去年、脳神経外科に行ったんです。老化だと言われた時、ちょっと、がくぜんとしましたね。受け入れるのが、ちょっと、まだ…。薬を飲むことで、ちょっとでも戻せるならと思うんですけど…衰えが怖いですね。僕は病気の方が、原因が分かって良かったんです。単純に衰えなんだと思った時、ゾクゾクッとしました。

 西田氏といえば、16年のNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」をはじめ、人気ドラマや実写映画の脚本家として知られるが、その名前が世間に一気に広まった火付けとなった作品が、初めてテレビアニメの脚本を担当した11年の「TIGER&BUNNY」だ。一般人と特殊能力者「NEXT」が共存する都市シュテルンビルトを舞台に、「NEXT」のワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹(声=平田広明)とバーナビー・ブルックス Jr.(声=森田成一)らヒーローが、特殊能力を使い、街の平和を守る物語。能力が落ちていく虎徹の苦悩など、人間の内面をも深く描き社会現象的な人気を巻き起こした。虎徹役の平田は「泥棒役者」にも出演した。

 西田氏 普通、気付かないですよね。写真なんですよ。結構、早い時間から出てますよね(笑い)こうだったら、面白いかな、楽しいかなというアイデアは詰めましたね。

 「TIGER&BUNNY」は12年に舞台化され、劇場版として同年に「-The Beginning」、14年には「-The Rising」が公開されたが、その後、具体的な動きはない。今後の展開について聞いた。

 西田氏 やりたい気持ちは、ずっとあるんですけど…ちょっと、まだ。僕は気持ちは、言っているんですよ。続編があればと思うし、キャラクターのその後は、ずっと思いをはせてはいるんですよ。僕が原作者でも何でもないので(スタッフの)皆さんと動きだすことが出来れば、もう、それを形にしていきたいなと。(ファンの)皆さんの声は届いていますし、我々スタッフも、その思いではいますけど。やりたい気持ちは、本当に…頑張ります。

 脚本家・西田征史…経験、年齢を重ねた思考は、より深みを増し、先へと進んでいく。【村上幸将】