サザンオールスターズ桑田佳祐(52)の姉で、桑田の一部の楽曲で英語補作詞を手がけた岩本えり子さんが19日に死去したことが22日、分かった。56歳だった。えり子さんは乳がんを克服したが、今年2月、別のがんで余命数カ月と宣告されていた。桑田はビートルズ好きのえり子さんの影響で音楽を聴くようになり、プロの道を歩むことになった。そのため、ファンの間ではサザンの名曲「いとしのエリー」のエリーはお姉さんとの伝説まであった。

 神奈川・茅ケ崎の景観を守る活動をする市民団体「茅ケ崎・浜景観づくり推進会議」の代表を務めていたえり子さんは、今年の2月に体調を崩し、がんで余命数カ月と宣告された。95年に乳がんを患った時はリンパ節まで転移し、医師から「末期」と言われたが克服。2度目の「奇跡」を信じ療養していたが、亡くなる数日前に茅ケ崎市内の病院に入院し、19日に帰らぬ人となった。

 関係者によると、桑田はえり子さんの最期をみとることはできなかったという。所属事務所は亡くなった事実だけを公表。桑田の表情は伝わってこず、両親に続いて姉も失った桑田のショックの大きさがうかがえる。

 えり子さんは12歳のころ、ビートルズに魅了され大ファンになった。両親が多忙で夜、自宅にいないことが多く、えり子さんはボリューム全開でビートルズの楽曲を聴いていた。桑田もえり子さんの影響でビートルズのとりこになり、中学から高校にかけてビートルズの楽曲、映画などに触れた。ビートルズは、桑田の音楽の礎ともなり、01年のAAA(アクト・アゲンスト・エイズ)のライブではビートルズの楽曲をテーマにした。

 えり子さんは結婚後の75年から96年まで米カリフォルニア州で暮らしており、英語が堪能。桑田は楽曲の英語詞の部分をえり子さんに相談した。桑田のソロシングル「波乗りジョニー」の収録曲「黄昏のサマー・ホリデイ」や、サザンのアルバム「キラーストリート」の「ロンリー・ウーマン」では、英語補作詞として「岩本えり子」の名前が刻まれている。桑田の音楽活動を陰で支えた存在でもあった。

 えり子さんは、市民団体での行動力などから、一時は茅ケ崎市長選の出馬もささやかれた。夫との間に17歳の長男がおり、茅ケ崎市内で暮らしていた。葬儀、告別式は近親者のみの密葬で行われる。喪主は夫の岩本知世(いわもと・ともよ)さん。