スポーツの聖地に寺が建立される。今年二十三回忌を迎える石原裕次郎さん(享年52)の法要イベントを7月5日に東京・国立競技場で行うことが21日、発表された。裕次郎さんが眠る横浜・総持寺の本堂を再現した実寸大の建物を同競技場内に設置し、参列者が献花する。主催する石原プロモーションはファンを招いた大がかりな法要イベントは最後とする覚悟もあり、総費用約20億円に及ぶスケールで希代のスターをしのぶ。

 破格のスケールの法要イベント「天国からのラストメッセージ

 『ありがとう』

 石原裕次郎二十三回忌」の概要は国立競技場内の一角に設けられた会見場で発表された。同プロ社長の渡は「一夜城ではございませんが、ここに裕次郎寺を作らせていただき、ファンのみなさんに献花をしていただければと思います」と明かした。

 すべてが常識破りだ。聖火台のある同競技場バックスタンド側に総持寺本殿を再現した幅50メートル、高さ17メートルの“寺”を建てる。安全面も考慮した鉄骨製で、裕次郎さんの主演・製作映画「黒部の太陽」で知られる黒部ダムの建設を手掛けた大手ゼネコン熊谷組が請け負う。設営と解体の作業は作業員のべ8000人が従事し、10日間に及ぶ。グラウンド面はすべて養生のため鉄板で覆い、10~20トントラックや高所クレーン、フォークリフトなどが行き来することになる。

 本堂内部も忠実に再現する。現在、総持寺に安置されているお釈迦(しゃか)様の仏像が運ばれ、内部の装飾品は大手仏具メーカーが製作する数百万円単位の“本物”を配置し、裕次郎さんの遺影も飾られる。

 当日は大型バス4台に分乗して会場入りした総持寺の僧侶160人が読経。参列したファンは、裕次郎さんのヒット曲をメドレーで合唱するコーラス隊300人の歌声を聴きながら、幅50メートルの献花台で手を合わせることができる。また同プロでは、少なくとも15万人の参列を見込んでいるため、セレモニーは石原軍団のあいさつなどにとどめ、献花のスムーズな進行を重視するつもりだ。

 大胆な発想は苦肉の策でもあった。99年に総持寺で行った十三回忌法要イベントにファン20万人が殺到。近隣を混乱させたこともあって、03年の十七回忌イベントは都内で主演映画を3日間連続で無料上映する形をとり、法要は関係者が参列して都内のホテルで実施した。二十三回忌の準備に入る際、同プロでは「スタッフも高齢化しており、大がかりなイベント法要はこれが最後」とした。

 その一方で「ファンの方々に参列していただく形をどうしてもとりたかった」という。会場規模やアクセスを考慮した結果、国立競技場に「寺」を建てる案が2年前に浮上。総持寺側も当初は大胆な発想に戸惑いをみせたが、陣頭指揮を執る同プロ小林正彦専務(73)の熱意が通じ、協力態勢が整ったという。同プロ関係者によると、法要にかかる総費用は20億円規模に達するという。戦後最大のスーパースターは没後も伝説を生む。

 [2009年5月22日7時55分

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