酒井法子容疑者(38=本名・高相法子)の所属事務所サンミュージックは、同容疑者に振り回されたまま、最後は逮捕の一報を受け止めるしかなかった。東京・四谷の同事務所では、8日午後10時40分すぎ、疲労から体調を崩し一時入院した相沢正久社長(60)は会見を開くこともできず、コメントを事務所幹部が代理で読み上げた。行方不明になった直後には同社長が「連絡してほしい」とマスコミを通じて訴える異常な事態に発展。同容疑者失跡(しっそう)から138時間。日本中を驚かし、心配した同事務所に連絡もしないまま、出頭した。

 サンミュージックは最後まで蚊帳の外だった。事務所関係者は酒井容疑者の出頭を、この日午後8時50分すぎ、テレビニュースの速報で知った。直後から報道陣が殺到したが、相沢社長は会見できなかった。酒井容疑者失跡後の疲労から体調を崩し一時入院。この日は自宅で療養に努めたため代わって同社の富岡弘明制作部長が同社長のコメントを読み上げた。「本日、酒井法子が自ら出頭したという報道を聞き、最悪の事態は避けられました。これからは警察の取り調べに包み隠さず正直にすべてを話してほしいと思います」。行方不明になってから一切の連絡もよこさなかった同容疑者に対し、最後まで安否を気づかった。そのころ酒井容疑者は取り調べにあいまいな供述を始めていた。

 同事務所が受けた大きな動揺が、そのまま日本中に伝わった。同容疑者が事件現場から行方をくらました直後、夫の逮捕にショックを受けて長男を連れて失踪したとみていた。4日には高相容疑者の母と相談し、捜索願を出した。同社長は同日夜に会見を開き、報道陣を前に「最悪の状況を避けたい。とにかく連絡してほしい」と悲痛な表情で訴えた。異様な光景はそのまま全国に伝わり、同容疑者の動向に日本中が注目した。しかしその後も同容疑者からはまったく連絡がなかった。山梨県身延山付近で携帯電話の電波をキャッチしたという情報が明らかになっても同事務所では「心当たりがない」と戸惑うばかりだった。都内の関係者のもとに身を寄せていた同容疑者が出頭を決意する際も、一切の連絡もなかった。

 同容疑者をよく知る仕事関係者らによると、同事務所が翻弄(ほんろう)されるのも仕方なかったという。同容疑者の弟が覚せい剤の使用で逮捕されていたことも明らかになったが、同事務所では弟の存在を知る人すらいなかった。同容疑者は相沢社長を含め、スタッフに対し自分の身辺をほとんど明かしていなかった。さかのぼれば、98年に高相容疑者と結婚した際にも、突然スタッフに妊娠を告げ、周囲が対応に追われた。

 結婚・出産後は、仕事選びもプライベートのスケジュールを優先させ、短期間で集中してこなし、休みを長期間取るスタイルを貫いた。かつてトップアイドルの地位を築いた同容疑者に対し、同事務所は功労者として厚遇。出演料の取り分もほかのタレントと比べて破格の待遇としていた。同容疑者は数年前にはタトゥーを足首に入れ、スタッフを戸惑わせたこともあった。

 同事務所に近い関係者によると同社長は、同容疑者に対して「反省をして再び芸能活動をしたいと言うなら、手を差し伸べたい」と話しているという。アイドルの暴走が、今も信じられないようだ。

 [2009年8月9日9時45分

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