歌手アグネス・チャン(54)が来年3月16日に32年ぶりとなる日本武道館公演を行うことが22日、分かった。このほど、日刊スポーツの取材に応じ、「72年『ひなげしの花』で日本デビューして以来の、歌手アグネスの集大成を見せたい」と、ベストパフォーマンスを誓った。カナダと韓国からゲストを迎え、国際色豊かなステージにする。

 アイドル時代の78年8月31日以来、32年ぶりとなる武道館公演。「当時はただ無我夢中で良く覚えていないんです。ただ、オープニングでクレーンからステージに降りて、1万人から『お帰りなさい!』の大歓声を受けたことだけは今も耳に残っています」。3児の母となった今回は、ファンと自分の記憶に残る楽しいステージにするつもりだ。

 「香港の妖精」として日本デビューしたのが72年。トップアイドルの仲間入りを果たしたが、76年に惜しまれながら引退。カナダのトロント大に入学した。学問とボランティア活動に専念する覚悟を決めて、芸能界に未練はなかった。ところが、翌年に一家の大黒柱である父が死去。運命が一転した。「アグネスの歌っている姿が1番好き」と公言する母への願いをかなえ、香港に残した家族の生活を支えるために再びマイクを握ることになった。

 2年のブランクをものともせず、日本のファンに迎えられたが、心中は複雑だった。「みんなの期待に応えなくては」と自分を追い詰め、過度のストレスが襲った。「緊張と疲労、そしてプレッシャーから文字が揺れて見えた。特にラジオの生番組が大変。台本が読めないんですから」。やがて、心身ともに新環境に慣れると、歌手・タレント業とボランティア活動の両輪がうまく回転し始めた。

 今回の演出構想も着々と進んでいる。アイドル時代から新曲までのバラエティーに富んだ楽曲を選び、カナダと韓国からゲストを迎えて国際色豊かなステージにする。「来年に38周年を迎えるなんて奇跡です。ファンの人たちと一緒に熱い青春時代を思い起こして、熱狂のオーラが武道館の外に飛び出すようなステージにしたい」。香港が生んだ妖精が約5カ月後、アーティストの聖地で再び舞う。

 [2009年10月23日8時21分

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