<第13回日刊スポーツ・ドラマグランプリ受賞者発表>
作品賞にTBS系「ヤマトナデシコ七変化」が選ばれた。人気漫画をドラマ化し、KAT―TUN亀梨和也(24)が主演男優賞、ヒロインの大政絢(19)が助演女優賞、この作品賞で3冠達成だ。TBSで数多くのヒットドラマをプロデュースしてきた石井康晴(41)三城真一両プロデューサー(41)が3年ぶりにタッグを組み、ホラーとコメディーを織り交ぜた作品は、幅広い世代から受け入れられた。
受賞のインタビューに入るや、三城氏は「うれしいですね」と笑顔で声をはずませた。石井氏は「僕らは、電車の中で中高生がヤマナデ面白かったね、と話す日常会話を聞くことが一番うれしく感じていました」と実感をこめた。
人気漫画をドラマ化したことで、制作サイドには最重要課題があった。
三城氏
実は「花より男子2」を同じチームで作ってきたこともあって、比較対象にならないように、際立ったものを作りたかったんです。09年は世相的に暗く元気のない日本だったので。とにかく能天気というか、楽しい作品を作りたかった。人間の喜怒哀楽が出るようなメッセージと、きちっと個性を出して、説明よりも行動で示す勇気を伝えたかったんです。
恭平のキャラクターに亀梨、スナコに大政を配し、2人を囲む手越祐也、内博貴、宮尾俊太郎のイケメン勢に加え、加藤清史郎、高島礼子と場の空気感を動かす豪華キャスティングを実現させた。三城氏によると、恭平とスナコが抱えるコンプレックスには、「理想と現実のギャップに逃げず、自分をもっと好きになるために勇気をもって行動してほしい」というメッセージが込められていた。
第1話の放送後、亀梨は「髪を切る場面があれば、切ります!」と言い、思い切って髪を切る行動力を見せた。これまでのクールで器用なイメージを一転させ、がさつで下町っぽさをさらに印象づけた。
亀梨は現場の雰囲気作りにも大いに貢献したという。「亀梨くんの気遣いは本当に素晴らしかった。一晩かけてキーマカレーを作ってきてくれて。清史郎くん用には味付けを変えたものを。終盤では、もう終わっちゃうのが寂しいという声も聞けました」と石井氏は振り返る。
「花より男子2」などをヒットさせた石井氏と三城氏のタッグは今作品で7作目だった。2人の共通したドラマ作りに向けた信念は「ファンタジー(日常でありそうでない設定)に、いかにリアリティーをもたせる」かという。「ちょっぴりばかばかしいけど面白い。それが一番重要」と三城氏。こだわり抜く集中よりも、場をリラックスさせる雰囲気づくりにおもむきを置いた点で、今作品については「キャスト、スタッフの信頼関係を見事に築き上げた3カ月間だった」と胸を張った。そして、見据える今後のドラマ作りについては三城、石井両氏とも「日本は内向きなものが多い。もっと世界に通用する、発信できる内容を作っていきたい」と声をそろえた。【梶ひと美】
[2010年4月30日12時4分
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