AKB48前田敦子(20)の卒業は、関係者、メンバー、ファンに大きな衝撃を与えた。秋元康総合プロデューサー(55)らも決定には携わらず、前田自身に託した決断。同じ1期メンバーでリーダーの高橋みなみ(20)は、声を震わせながらマイクを握り、動揺を隠せないメンバーを落ち着かせようと必死になった。一方で「本当はやめてほしくない」と言った。またこの日、第4回AKB48選抜総選挙の開催(6月6日、日本武道館)も決定。現時点で前田が出馬するかどうかは決まっていない。

 覚悟していた瞬間が、ついに訪れた。エースの決断を聞いた高橋は、声を震わせながらマイクを握った。「去年、敦子から『考えていることがある』と打ち明けられました。敦子は一時の感情で(卒業と)言っているわけじゃない。たくさん考えた上での結論なんです」。

 盟友だった。同じ1期生。AKB48誕生の日から、苦楽をともにしてきた。「隣でずっと見てきました。たくさん、見てきました。涙も、笑うところも全部、見てきました」。自分がグループのまとめ役、汚れ役を買って出たのも、「不思議な魅力を持つ前田を支えよう」と思う気持ちが、1つのきっかけだった。「本当は、本当は、やめてほしくない」。本音を漏らしながらも、「決断は本人の意思です。ここがゴール地点じゃない。今までたくさんのものを背負ってきた敦子を、見送ってあげてほしい」とエールを送った。精いっぱいの強がりだった。

 前田と二枚看板だった大島優子(23)は、言葉も出せなかった。焦点の定まらない目で、アリーナの高い天井を見上げるだけ。3度の選抜総選挙では、常に1、2位を争ってきた。センターに立つ重圧を共有できるライバルとの突然の別れを、すぐには理解できないようだった。小嶋陽菜(23)は、メークが崩れるほど大泣きした。

 最後の曲「会いたかった」が流れ始めた。ステージでは、前田を中心に抱擁の輪ができた。仲川遥香がむせび泣きながら、前田に抱きついた。おえつを漏らして動けない河西智美は、前田に手を引っ張られながらやっと動きだした。

 そんな中、高橋はあえて輪には加わらず、声を張り上げた。

 「せーの!

 会いたかった!」

 そう絶叫するや、顔をくしゃくしゃにしながら、前田の胸に思い切り飛び込んだ。【森本隆】