東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市大島の元タレント気仙沼ちゃんこと白幡美千子さん(57)が15日、山梨県北杜市で開催された「白州鳥原平・夏そばまつり」に参加した。八ケ岳と甲斐駒ケ岳に挟まれた標高600メートルの白州鳥原平平原の会場で、白幡さんは、そばの水切りや盛り付けに追われるも「やっぱり働くことは気持ちいいね。震災以降初めての接客だから、緊張しちゃうよ」と頬を赤くした。

 震災で大島は高さ20メートル以上の大津波に襲われ、白幡さんら家族4人で経営する民宿「アインスくりこ」も1階まで浸水し、休業を余儀なくされた。同民宿は、今秋に営業再開予定だが、民宿経営者や漁師の大半は仕事再開のめどがたっていないのが現状だ。そこで今年4月、夏そばまつりのプロデューサー成田重行さん(70)が明治・大正時代に大島で盛んだったそば作りを提案。失業、休業した白幡さんら地元有志は愛好会「蕎麦さろん」を結成した。週3日、1日3時間以上かけ、そば作りの特訓を重ねた。

 「復興そば」(500円)は、白幡さんの恩師の萩本欽一(71)の「人と同じことをするな」という教えを基に、手打ちそばの上にレタスやミニトマト、大島産のわかめなどをトッピングした一風変わったサラダ風そば(マヨネーズ付き)だ。この日、初めて一般販売し、3時間で限定100食が完売する大盛況だった。

 今月末には、大島の高台にそばの種をまき、本格的に大島産のそば作りが始まる。白幡さんは「震災で大島の観光は衰退したけど、これからは『復興そば』が観光の目玉になってもらえれば、島の活気も戻るかもしれない。島の観光産業も、そばのように細く長く続くことを願うだけだよ」と期待を込めた。【峯岸佑樹】

 ◆気仙沼ちゃん

 本名・白幡美千子。宮城県気仙沼市出身。1977年(昭52)から78年にかけてフジテレビ系「欽ちゃんのドンとやってみよう!」に一般公募を経て出演した。素朴なキャラクターと東北弁で「気仙沼ちゃん」として人気を得た。80年に地元で結婚し、気仙沼湾の大島で民宿「アインスくりこ」を経営。