「キャッツ」「オペラ座の怪人」などを上演する人気劇団「劇団四季」の浅利慶太氏(81)が25日、四季株式会社の社長を退任した。本人の意向によるものでこの日、取締役会で受理された。創立60周年を迎えた劇団四季の創立メンバーで、名実ともに大黒柱だった浅利氏の退任に、劇団内には動揺が広がっている。同氏は今後も演出家としての活動は続けるという。

 この日、横浜市の劇団四季芸術センターで、劇団四季を運営する四季株式会社の取締役会が開催された。浅利氏の社長退任と、吉田智誉樹氏(50)の社長就任が決定した。前日24日に所属俳優、技術スタッフ、制作スタッフなど約400人の劇団員が集まった「劇団総会」も行われ、浅利氏が「社長を退任することになりました」と報告すると、慰労を込めた大きな拍手が起こったという。

 浅利氏は日ごろから、劇団経営の一線から退く意向を周囲に明かしていた。「僕も今年で81歳。劇団も創立60周年を迎え、経営についても若い人に任せたい」などと、ことあるごとに話していた。これまでにも社長を退き、芸術総監督や会長になったことがあったが、しばらくして社長に復帰していた。しかし今回ばかりは、他の役職に就くことはなく、劇団からフリーとなった。

 浅利氏は慶大在学中の53年に俳優日下武史(82)らと劇団四季を旗揚げした。ミュージカル「キャッツ」「オペラ座の怪人」「ライオンキング」などのロングランで、全国に8つの専用劇場を持ち、年間3000ステージ、300万人動員、200億円以上の売り上げを誇る大劇団に育て上げた。大黒柱の退任に劇団内に動揺が広がっているという。

 浅利氏は演出家としての活動は続ける意向で、これまで手掛けた四季のレパートリー作品の再演に際して、演出家としてかかわることはありそうだ。また、四季株式会社の大株主であることにも変わりはないという。

 文学座の杉村春子さん、民芸の宇野重吉さん、滝沢修さん、俳優座の千田是也さんなど、多くの劇団の創立者は亡くなるまでその代表を務めた。今回の浅利氏の異例の決断は、波紋を広げそうだ。

 ◆浅利慶太(あさり・けいた)1933年(昭8)3月16日、東京都生まれ。慶大中退。53年に劇団四季結成。70年代から海外ミュージカルの翻訳上演をスタートさせ、83年「キャッツ」初演のロングラン公演を成功させた。芸術総監督として、演出、配役などを中心になって手掛けている。98年に長野五輪の開会式の総合プロデューサーを務めた。