覚せい剤取締法違反(所持、使用)などの罪に問われた歌手ASKA(本名・宮崎重明)被告(56)の初公判が28日、東京地裁で行われた。起訴内容をほぼ認めたほか、94年に初めて合成麻薬MDMAを使用し、2010年夏から覚せい剤を使っていたと説明。様子を心配する妻が立ち会って毎週、専用キットで覚せい剤使用の有無をチェックしていたが、検査直後に使用する繰り返しだったことも明かした。検察側は3年を求刑、即日結審した。判決公判は9月12日午後2時から行われる。

 黒縁めがねをかけたASKA被告は保釈時と同じ紺色のスーツ姿。体形や顔つきは保釈時と変わらない印象だった。起訴状朗読後、起訴内容に言いたいことがあるか聞かれると「何もありません」。終始無表情のままで声に力がなかった。

 弁護側の被告人質問では薬物に手を染めた経緯を語った。睡眠導入剤や眠気を取る薬を使用し始めたのが00年前後。「過剰摂取だったと思います」。覚せい剤に手を出したのは10年夏ごろ。「興味もありましたが、処方された薬が効かなくなってきたからです」。MDMAは「二十数年前にロンドンで1回使い、今年3月まで使ったことはありません」。今年3月に100錠を大量購入した理由を「ふと思い出したので(売人に)頼みました。たった1個のために『100錠しか売れない』と言われ、買う羽目になりました」。検察側の供述証拠によると、覚せい剤は、東京・池袋などで1袋30万円で氏名不詳の人間から購入したという。

 妻洋子さんは体調不良を理由に情状証人として出廷しなかったが、供述書を弁護士が読み上げた。夫の異変に気付き、昨年5月以降、自分が立ち会った上で毎週、検査キットで覚せい剤の有無を自宅で調べた。ASKA被告は逮捕されるまで「覚せい剤を使っていない」と薬物使用を否定し続けたという。

 ASKA被告は、昨年8月に週刊誌で薬物疑惑を報じられた前後は覚せい剤を使用しなかったが、再び手を出したのは昨年11月。検察側の質問に「我慢できなかった。恐ろしい薬」。裁判官に我慢できなかった理由を聞かれ、「使用した翌日の倦怠(けんたい)感、体が動かないぐらい眠くなるのが嫌で、すぐ次のを吸ってしまった」と答えた。さらに「所持したものがあるから…。なくなってしまえばあきらめる」と常習性を連想させる発言もした。

 「家族を安心させるため」と始めた週1回の検査は、意味がないものだった。検査後にすぐ覚せい剤を使っていたことについて、検察側に「なるべく日にちを稼げるじゃないですか。5日から1週間は尿から反応が出てしまいますから。検査キットを使って(結果が出た後)すぐ(覚せい剤を)吸えば、反応が出ないと思ったので」と説明。「周囲の目をかいくぐり、使おうと思ったのか」と指摘されると「そうです」と小声で答えた。薬物売人との付き合いを問われると、沈黙後、「付き合わなければよかったと思います。今後は連絡が取れそうなものを全部削除します」と反省を示した。

 最後に、書面を読み上げる形で「ファンや関係者の信頼を裏切った」と謝罪した。7月の保釈以来、入院を続けており、今後も治療を続けるという。

 検察側は論告で「長期間違法薬物を使用し、常習性が高く、極めて多量の違法薬物を所持しており悪質。再犯の可能性がある。社会的影響力を考慮し、厳しい処罰が必要」と指摘した。【近藤由美子】◆冒頭陳述要旨

 ASKA被告は94年ごろに英国でMDMAを使用したことがあった。遅くとも2010年以降は、複数の密売人から覚せい剤を購入し、あぶるなどして繰り返し使用した。さらに遅くとも今年3月ごろには、密売人からMDMAなどを含有する錠剤100錠を購入し、5月17日に逮捕されるまで繰り返し使用していた。5月17日、ASKA被告は目黒区内の自宅地下1階の書斎内で覚せい剤入りのポリ袋、覚せい剤の付着したガラスパイプ、錠剤多数を入れた筒型の金属ケースをいずれも軍手で包み込んで隠していた。さらに黒色のケースに錠剤多数を隠していた。