手描きから2分半の短編アニメへ、そして長編映画になった作品が明日12日から公開される。アニメ映画「『紙兎ロペ』つか、夏休みラスイチってマジっすか!?」。内山勇士監督(31)は、手描きで始めたアニメの想定外の成長ぶりに今も驚きを隠さない。内山監督は、大手企業とのコラボレーションもするほどに急成長を遂げた「紙兎ロペ」の飛躍と、変わらぬ姿勢について明かした。

 ポスターには「まさかの映画化!!」とある。紙のウサギとリスが繰り広げるシュールな会話が長編映画になるなんて、という意味だが、内山監督には別の意味で「まさか」だ。「もともと手描きで始めたもの。手に取ってもらえればいいなと思って、紙で動物をデザインしたのがきっかけです」と話す。

 3年前、TOHOシネマズで、映画本編上映前に流す企画として「紙兎ロペ」が誕生した。下町に住む高校生、ロペとアキラ先輩のくすっと笑える会話が、口コミで人気になり、DVD2巻で売り上げ3万本、投稿サイトYouTubeでは、延べ250万回再生された。

 始まった当初はスタッフ5、6人だった。上映2分半の世界で、背景のカット数は多くても2枚だった。あまりの人気に映画化が決まり、50人以上のスタッフが動き、カット数も200枚以上に及ぶことに。手づくりで小粒だった作品が、今ではauやパナソニックともコラボレーションするまでになった。共同で製作にあたった青池良輔監督との間で「海外ではどう見せるか」という話も出ているそうだ。しかし、どんなに作品が大きくなっても「意識しすぎず、下町の高校生の目線は崩さないまま、等身大の2人を描きたい」と言う。

 3月まで東京工芸大映像科で助手として勤務しながらアニメを作っていた。4月からはフリーになって活動している。「紙兎ロペ」と同じようにステップアップしているが「いまだに学生時代と変わらないのはネタを書く悩みです。でも作り続けることが大事。もう何も出てこないというのが3段階くらい続いて、それでも最後の階段に何かがある」と話す。生みの苦しみを味わいながら、今後も異色の作品を世に送り出すのだろう。【小林千穂】

 ◆紙兎ロペ

 主な登場人物は下町に住む高校生2年生ロペと3年生アキラ先輩。短編は2人が映画館に行くまでの珍道中を描いた。ほとんどのキャラクターの声を内山監督が担当。長編はゲスト声優にAKB48篠田麻里子、バカリズム、ふかわりょうを迎え、夏休み最後の1日の騒動を描いた。