12日に80歳で亡くなった演出家蜷川幸雄さんの遺作舞台「尺には尺を」(25日~6月11日)の公開稽古が24日、埼玉・さいたま芸術劇場で行われた。いつも蜷川さんが座った演出家席のテーブルに遺影と愛用のマグカップが置かれた。

 亡くなる19日前の4月23日に主演の藤木直人(43)多部未華子(26)ら出演者が病院で対面した。「海辺のカフカ」以来の蜷川作品となる藤木は「その時、本読みをするつもりで台本を持って行ったけれど、体調が悪く、声も絞り出すようだった。あいさつして、『頑張ります』としか言えなかった。でも、必ず戻ってくると信じていたし、その時にちゃんとしたものを見せたいと必死だった。蜷川さんの思いを形にして、明日初日(25日)は蜷川さんに見ていただきたい」と声を詰まらせながら話した。

 蜷川作品は14年「わたしを離さない」に続いて2作目の多部は「亡くなって寂しいけれど、どこか近くにいるような気がして、大丈夫です。最後に会った時は、顔を見て手を握りました。最初の舞台の千秋楽に『蜷川さんのシェークスピアをやりたい』と直談判して、ここに立っている。蜷川さんが『一緒にやろう』とおっしゃった言葉を忘れずに芝居をしたい」と気丈に話した。