リオデジャネイロ・パラリンピック金メダル最有力候補の山本篤(34=スズキ浜松AC)が、T42(片大腿切断など)男子走り幅跳びで6メートル49の好記録で快勝した。5月の日本選手権で出した5メートル56の世界記録には7センチ及ばなかったが、6メートル40台を3回跳ぶなど、高いレベルでの安定感を見せた。T44(片下腿切断など)女子走り幅跳びは、昨年の世界選手権銅メダリストの高桑早生(24=エイベックスグループHD)が5メートル11の自己ベストで優勝。5メートル51のアジア記録保持者の中西麻耶(31=大分県身障陸協)は5メートル9で2位だった。

 黄色のスーツに身を包む山本は宇宙人のようだった。ジャンプの高さと滞空時間が、他の選手とは次元が違うのだ。1本目、高速助走からフワリと舞い上がり、6メートル49を空中浮遊してみせた。「1本目は跳びにいきました。調子はふつうですが、いい感じでいけました」。もっとも山本自身の納得のジャンプは6メートル43センチの4本目だという。「体がめっちゃ浮いている感じがして、でもそれに自分が我慢できずに足が落ちた。もう少し我慢できていれば……」。世界記録を更新できたかもしれなかった。

 5月の日本選手権で6メートル56を跳んで自身初めて世界記録を樹立したが、3週間後のリオデジャネイロでのGPシリーズでライバルのダニエル・ヨルゲンセン(デンマーク)に6メートル67に更新された。もっとも山本は「僕はすべての条件が整ってないと世界記録は出せないけど、ダニエルは出せるんです。やってくるとは思っていました」と気にする様子はない。

 リオデジャネイロ・パラリンピックまであと3カ月。「いろんなことを試す時間がある。今日の4本目の跳躍で足が落ちないように、自分の中で考えていきたい。うまくいけば6メートル70~80はいけると思うけど、パラリンピックは記録よりも結果、金メダルです」とあくまで本番は勝負にこだわる。【首藤正徳】