男子テニスで世界6位の錦織圭(26=日清食品)が、テニスの開幕戦をストレート勝ちでスタートした。7月にツアー初優勝を遂げて波に乗る同33位のラモス(スペイン)に6-2、6-4で勝利。1920年アントワープ五輪以来、日本テニス96年ぶりのメダルに向け、1度も自分のサービスゲームを落とさず、上々の滑り出しとなった。

 錦織が最高のスタートを切った。栄誉ある五輪テニスの開幕戦。前夜は「気持ちが高まって」少し寝るのに苦労した。コートでは緊張も見せず、ラモスに79分でストレート勝ち。「プレーの感覚がすごく良かった」と右手でガッツポーズだ。

 1度も自分のサービスゲームを落とさなかった。コートが遅く、相手の回転の利いたストロークを警戒した。ただ、ストローク戦となれば世界6位の錦織の方が数段、レベルは上。相手のサービスゲームを3度破り、「大事なゲームでしっかりリターンができた」と余裕の勝利だ。

 錦織らしい“離れ技”も飛び出した。第2セット第2ゲームで、サーブを打った瞬間、勢いでラケットを落とした。相手の返球が緩く、すぐにラケットを拾いラリーに。最後はバックで決め、ポイントにつなげた。センターコートの観衆は大歓声。「いい練習になった」と笑いを誘った錦織の妙技に酔いしれた。

 錦織にとって試練の夏だ。五輪の前週と翌週には、今季初優勝を目標にした4大大会に次ぐマスターズ大会がある厳しい日程。加えて、ウィンブルドン4回戦で途中棄権した左脇腹痛は完治していない。大会は、今五輪から世界ランクのポイントがつかなくなり、ジカ熱なども不安。トップ10から5人が欠場した。

 プロのテニス選手として、このような五輪に出場することをやゆされることもあった。しかし、錦織の口から「出たくない」という言葉はなし。五輪への出場は「小さい頃から見てきた夢」という自分の純粋な気持ちに従っただけだ。

 先週のトロントで行われたマスターズで、左脇腹痛を抱えながら今季2度目の準優勝。五輪に向け弾みをつけた。2日にリオデジャネイロ入り。悪評高い選手村に入っても「あまり問題はない」。1人部屋をあてがわれ「集中できる」とリラックスした。

 日程も味方する。2回戦は現地時間9日の予定。2日、間が空く。この日、早い時間でストレート勝ちをしたおかげで、2日半の休養が取れる。これは、先週の5試合を戦った体には大きい。流れは96年ぶりのメダルに向いている。

 ◆錦織と五輪

 初出場は08年北京五輪。世界124位だったが、将来有望な新人として国際テニス連盟が推薦出場枠を与えた。だが1回戦でフルセットの末に同34位のシュットラー(ドイツ)に敗退。12年ロンドン五輪は世界17位、第15シードとして出場。3回戦で同5位のフェレール(スペイン)を破り、日本男子として24年パリ五輪原田武一以来88年ぶり8強。準々決勝で同9位デルポトロ(アルゼンチン)に敗れたが5位入賞。