日刊スポーツ評論家の秋田豊氏(46)の「熱血秋田塾・九州キャンプ編」第2回は、元日本代表のMF中村俊輔(38)が加入した磐田を鹿児島・鴨池に訪ねた。

 やはり注目は中村選手の加入だ。4-2-3-1という布陣のトップ下に入る司令塔を、なぜ名波監督が獲得したのか。それは服部強化部長とも話したが「そこだよね」という場所にボールが動くことだ。練習を見ていても、チーム全体がうまく回るようにプレーしているのをすごく感じる。

 彼の良さはFK、キックの質や精度、得点に絡むプレーにある。だが、それ以外の部分でも周りを生かすことが可能。中村選手が良いボールを出すことによって、もっと周りの選手が動きだせる。攻撃の組み立て段階からプラスアルファが生まれることで良いクロスやパスも入る。

 実際に選手たちは「以前よりもパスが出てくる」と話す。名古屋から加入した川又選手は「自分は1人で何かをやるタイプじゃない。楽しみだし、実際に今もパスが出てきている。得点を取れる気がしている」と明かしてくれた。相乗効果が出てきて、得点のにおいを感じているのだろう。

 以前、中村選手に磐田での仕事について聞いた。「若手を引っ張りだして居残り練習をしたり、ベテランが1年でも長くサッカーをやりたいと思えるように。苦しい部分も含めて自分の経験をチームに還元したい」と話してくれた。

 1人で輝こうなんて思っていない。その存在は若手にとっても成長しやすい環境につながる。U-20日本代表のストライカーの小川選手も「動きだしのタイミングなど、勉強させてもらっています」と言った。若手の実力を伸ばす意味でも中村選手の存在は大きい。

 磐田はJ1復帰1年目の昨季は年間13位に終わった。ただ苦しい戦いを乗り越えた経験に加えて、今季は中村選手ら戦力も充実している。チームは好転していくように思う。注目したい。(日刊スポーツ評論家)